2022.06.13

近くにいるのに見えてない…「貧困」の世界に生きる子達が抱える「言えないしんどさ」

ブレイディみかこインタビュー

「底辺」と言われていたイギリスのある公立中学校が音楽やダンス、演劇などのクラブ活動に力を入れて子どもたちにさせたいことをさせ始めると学力が上がり、スクールランキングも上がった――そんな学校に通うことに決めた息子の姿を描いてベストセラーとなったエッセイ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』。

その著者であるブレイディみかこが、『ぼくイエ』では描けなかった子たちの姿を描いたという小説『両手にトカレフ』(ポプラ社)が刊行された。現代のイギリスを舞台に、依存症の母と幼い弟と同居し、日々の食事にも窮する生活保護家庭に生きるローティーンの少女ミアが、大正期日本のアナキスト金子文子の自伝を読んで自分の姿を重ね合わせながら困難を生き抜き、読書と音楽を通じて居場所を見つけていく物語だ。

作品に込めたものについて、著者に訊いた。

[PHOTO]iStock
 

大人よりも子どものほうが深く考えている

――2021年の学校読書調査を見ると『ぼくイエ』は高校2年生女子の「今年に入って読んだ本」の上位に入っています。『両手にトカレフ』の主人公ミアと同世代の日本の女性に『ぼくイエ』が読まれているという実感はありますか。

ブレイディ 出版社のほうには感想が届いていると思いますが、私は見せてもらっていないので実感があるかというと……「ない」(笑)。でもすごく嬉しいですね。以前、知り合いの書店員さんが中学生の女の子が書いた『ぼくイエ』の読書感想文を見せてくださったことがあり、それが非常に素晴らしい内容でびっくりしたんです。

『ぼくイエ』に出てくるうちの息子の発言に対して「中学生の子どもが本当にこんなこと言うのか?」という声があるんですけど、「いやいや、この子のほうがずっと鋭いよ」と思いました。でも自分のことを思い返してみても、中高生時代にはいろんなことを深く考えていたし、小難しい本も読んでいたんですよね。大人のほうが忙しさにかまけて本も読まなくなるし、「生きるとは」みたいな哲学的なことを考えなくなる。

――今回の小説の主人公は10代の女性です。

ブレイディ 今回は「少女小説を書く」と決めていました。『ぼくイエ』は少年たちの話。その次に出した『ワイルドサイドをほっつき歩け』はオッサンたちの話でしたから。女性について書きたい、それもお母さんの立場ではなく少女の視点で書きたいと思っていましたし、当事者世代に読んでほしいという気持ちがありました。もちろん、大人にも読んでほしいと思っていますが。

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