売場からの逆転発想で100万部!『人は話し方が9割』ヒットの仕掛け

なんと読者は小学生から91歳まで
株式会社すばる舎が2019年9月に刊行した『人は話し方が9割』(永松茂久著)が、22年2月の重版で累計発行部数100万部を突破。22年6月1日に発表された日販(日本出版販売)の上半期ベストセラーランキングでも、総合1位に輝いた。「話し方」の本は業界では売れるジャンルと目され、すでに多くのベストセラーがある。それなのに、なぜこの本だけがミリオンセラーを達成できたのか?「上阪徹のブックライター塾」で行われた上阪氏のインタビューで、すばる舎の担当編集者である上江洲安成氏がヒットの裏側を語った。レッドオーシャンの市場でナンバーワンを取るためのヒントが満載だ。

母がビジネス書を読む姿を想像した

上阪:2年以上にわたって売れ続け、ついにミリオンセラー達成。制作にあたり編集者として最も意識していたことは、どんなことだったのでしょうか?

上江洲:たくさんの方に読んでいただけるように、とにかく敷居を低くすることを心がけました。小学生からお年寄りまで、それこそビジネス書をあまり読まない自分の母親でも読めるような本にしようと思って。難しい言葉はできるだけ使わないようにしたり、不必要な言葉は削ったりしました。だから、この本は文字数が5万字前後と、とても少ないんです。

上阪:「読む」ハードルを下げていったんですね。

上江洲:はい。書店で展開される面数を増やしていかないと、本は売れません。例えば、郊外のショッピングセンターにあるような書店では、難しい本やビジネスに特化した本はたくさん並べてもらえないんです。そういう地方の書店でも、たくさん置いてもらえるような本を目指しました。

書店の良いところは、「偶然の出会い」があるところです。ショッピングセンターに家族や友達と遊びに来た人とか、お茶を飲みに来た人とか、漫画を買いに来た人とか、そういった方々にも、ついでに手に取っていただかないと、ヒットは狙えません。だから、売場から逆算して、読者との接点から本を作っていきました。

  • 『成熟とともに限りある時を生きる』ドミニック・ローホー
  • 『世界で最初に飢えるのは日本』鈴木宣弘
  • 『志望校選びの参考書』矢野耕平
  • 『魚は数をかぞえられるか』バターワース
  • 『神々の復讐』中山茂大