「正解がない時代」とは「正解がいくつもある時代」のこと
現代は、いままでの思考法――問題を分析し、その問題の正解を外から持ってくるという思考法――だけでは、多くの場面で通用しません。
私はいまの時代を「正解がない時代」というより、唯一解のない「正解がいくつもある時代」と捉えています。

そんな時代に必要なのは、やはり自分なりの正解を出していく思考法です。これはビジネスに限りません。直面している問題の解決など、すべての活動に求められている考え方です。
それは言い換えれば、「自分で考えて実行し、その結果を検証する」サイクルを続けることにほかなりません。
そこでまず、そのサイクルの基本的なプロセスについて説明していきましょう。
「自分で考えて実行する」とは
「自分で考えて実行する」ことは、じつは多くの人が、日常行っていることです。たとえば、「今日は午後から雨が降りそうだから折りたたみの傘を持って出よう」「今日は金曜日、ということは、いつも通る道は渋滞しそうだから、別の道を選ぼう」「昨晩は焼肉屋に行っていっぱい肉とごはんを食べたから、今日の夕食はさっぱりと野菜中心にしよう」といったことは、すべて自分で考えて実行することに含まれます。こうした日常的な出来事から、さまざまな計画を立てる、企画を考える、設計をするなどのことがすべて、「自分で考えて実行する」ことになります。
ですから、日ごろから意識的に、自分で考えて実行する機会を増やせるかどうかで、人生は大きく変わってくるのです。
一方、「親に言われたから実行した」「教師に言われたから~」「上司に言われたから~」「夫に(妻に)言われたから~」「マニュアルにそう書いてあるから~」「それが決まりだから~」というのはどうでしょうか? そこでは「自分で考えて」の部分が抜けています。
さらに、「自分で考えたけれど、実行しない」のはどうでしょうか?
じつは私は、「自分で考えて実行する」ことのうち、「実行する」ほうがより重要だと考えています。
というのも、自力で考えるときよりも、考えたことを実行しようとするときのほうが、さまざまな制約が次から次へと出てきて、はるかに難易度が上がるからです。
たとえば、自分の仕事で新たな企画を考えたり、プライベートで旅行の計画をする。しかしそれをいざ実行しようとすると、「時間がない」「人がいない」「お金がない」「場所がない」「実現する手段がわからない」というように、いろいろな制約が出てきてなかなか実行できないということはよくあります。「考える」と「実行する」の間にある壁は、じつは非常に大きい。