2022.06.09
# 学校・教育 # 思考法

「三現」を大事に行動すれば「正解」にたどり着ける

新失敗学 正解をつくる技術(6)/終
「決められた正解を素早く出す」ことが優秀な人とされた時代から「自ら正解をつくる」ことができる人の時代へ。「正解がいくつもある時代」になった今、自分たちで正解をつくっていく必要がある。そして自分たちで正解をつくるとは、仮説ー実行ー検証を回していくことにほかならない。そのためのポイントを丁寧に解説、これから私たちが身につけるべき思考法を明らかにした書籍『新失敗学 正解をつくる技術』から注目の章をピックアップしてお届け。

私が三現にこだわり続ける理由

きちんとした知識・情報を取り入れるうえで、私が以前から非常に大切にしているのが、「三現」です。

三現というのは私の造語で、「現地」「現物」「現人(げんにん)」の三つを表しています。それぞれ「現地まで足を運ぶこと」「現物を直接見たり触れたりすること」「現人(現場にいる人)の話を聴いたり議論をすること」を意味しています。

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三現で真面目に学ぼうとすると、五感をフルに使って観察対象と向き合うことになるので、メディア、ネットを通じて学ぶことより、はるかに立体的に多くのものを得ることができます。これは受ける情報量が圧倒的に違ううえに、脳の深い部分を刺激するからだと考えています。その結果、三現で得た知識は定着がより強固なものになりますが、これは体験学習のメリットと同じです。

私が三現の重要性に気づいたのは学生時代のことです。当時はとにかく実物に触れることを意識していました。実際に現場に行って実物に触れたりその場にいる人たちから話を聴くと、大学で講義を受けているときとは違っていろいろな気づきがあったのです。それが新たな知識の理解や、企画や設計などクリエイティブなことをするときに大いに役立つことを体験的に知って、意識して実践するようになったのです。

当時は「産業実習」といって、希望する学生たちに現場を体験させてくれる企業が多かったので、学生でも三現を実践するのは難しくありませんでした。恵まれていた時代だったのかもしれません。

なかでもとくに印象に残っているのは、富士製鉄(現在の日本製鉄)釜石での産業実習です。東大の先生を辞めてLD転炉製鉄の技法の開発を行っていた金森九郎さんにお目にかかり、現場を見せていただいたり話を伺うことができました。LD転炉というのは、粗鋼に直接酸素を吹き付けて炭素を燃やして鋼をつくる技術で、後に日本の製鉄会社がこの技術で世界を席巻し、世界中が取り入れたものです。その開発の最前線に直に触れられたことは貴重な経験になりました。この経験から私は三現を生涯の目標と考えるようになりました。金森さんには非常に感謝しています。

私はその後もチャンスがあると、勉強のために日本中の産業の現場に出かけるようにしています。

たとえば、トンネル技術を全部見たいと思って、北海道と青森県を結ぶ青函トンネルの建設現場に行ったことがありました。トンネル工事の現場は地下300メートルの場所にありましたが、地上の外は吹雪で寒かったのに、地下は地熱で暑く、作業員がパンツ一枚で作業をしている姿を見て驚きました。安全対策が厳しくなっているいまでは絶対にあり得ないことですが、あのときの光景は忘れられず、地下は暑いだけでなく地球の中心に近づくほど暑くなるという知識と一緒に私の中にいまでもしっかり根付いています。

 

また、蛇紋岩という空気に触れると膨れる岩がありますが、掘削作業をしている現場で本当に岩が膨れてくるのを見たときは衝撃を受けました。

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