芸能・映画界において権力を利用した性暴力被害が明るみになっているが、痴漢や人混みで女性を狙う「ぶつかり男」、そして近年増えているといわれる女性に対する男性による憎悪犯罪など、安全だといわれる日本でも、女性は日常の中で男性からの「暴力」のリスクに晒されている。

女性への憎悪犯罪が日本に先んじて社会問題化しているのが、韓国だ。2012年に水原バラバラ殺人事件、2016年に江南駅殺人事件と代表的なフェミサイドが起きており、性暴力被害件数も上昇の一途を辿っている。そんな韓国でいま、「女性護身術(Feminist Self Defense、あるいはWomen’s Self Defense)」への関心が高まっているという。

最初の女性護身術は1960年代後半、ボストンで発祥し、1970年代のフェミニズム運動の高まりとともに、さまざまな形で欧米に広まった。その後日本でも、2007年に国内初の女性護身術として「パラベラム」が開発され、続いて韓国でも「ASAP女性護身術」が登場。ASAPとは「Anti Sexual Assault Program(性暴力抵抗プログラム)」の略称で、武術家で大東流合気柔術師範のキム・ギテさんが、欧米で発祥した従来の女性護身術の対性暴力に関する部分をベースに開発したものだ。

今回、ギテさんとASAP女性護身術の師範の方々に、すぐに実践できる身の守り方、そして女性が身を守る上で大切な心構えについて聞いた。

 

何らかの抵抗をした女性は被害率が下がる

「護身術」と聞いて、下手に抵抗したらかえって暴力がエスカレートするのでは? と考える人もいるかもしれない。しかし、護身術を駆使したほうが女性の被害率が下がることは、統計的にも証明されている。

ギテさんが護身術の説明資料でも引用している1989年の韓国刑事政策研究院調査資料では、大声を出す、暴れるなど何らかの抵抗をした女性の強姦回避率は無抵抗の女性より約30%以上も高い70.4%であることが示されている。昨今でも、オンタリオ大学の研究(※1)によると、護身術を含む性暴力抵抗プログラムを受講した女子大生の性被害遭遇率が、受けなかったグループと比べて低く、性暴力を受けるリスクが46%低下したという。
さらに、加害者に強く抵抗を示さず泣いたり、嘆願するなどの方法をとった女性がレイプされる確率は約96%で、無抵抗の場合は約 93%と非常に高い、という結果を報告する論文(※2)もある。