広瀬さんが怒りを爆発させた発端は、直前の理事会で管理会社が配布した管理組合の予算に関する書類でした。ほかの理事たちはパッと目を通しただけですぐに承認してしまいましたが、過去に経理の仕事をしていた広瀬さんは違和感を覚えたそうです。
「渡されたバランスシートと収支内訳書(キャッシュフロー)の内容が、微妙に一致していないんです! あるはずの積立金がどうしても見つかりませんでした」

不思議に思った広瀬さんはその場で質問しましたが、管理会社はのらりくらりと回答をかわすばかりで、確たる答えは出てきませんでした。不自然に思った広瀬さんが終わった後にほかの理事たちに聞いてみたところ、薄々グレーであることは周知の事実だったようです。
「管理会社が怪しいことは、ほかの理事たちも気づいていました。自分たちが支払っている管理費が不正に使い込まれているかもしれないのに、億劫がってここまで放置していたなんて信じられません。
しかしもっと理解できないのは、理事会として追及しようとしたら止められたことです。『事を荒立てたくないから、このままでもいいんじゃないか?』『そこまで大きな額でもなさそうだし、少し多めに支払っていると思えば…』などと、暗に目をつぶるように言われました」
けれども正義感に駆られた広瀬さんは、一人で管理会社を追及し始めたそうです。理事会の場で収納代行機関の残高証明の提出を求めたり、毎月の管理費の使途内訳について質問したり、管理会社に対してアクションを起こしていきました。しかし怪しげな管理会社は何かと理由をつけて説明を回避し、重要な書類を見せようとしません。
あろうことか、ほかの理事たちも広瀬さんを白い目で見るばかり。困り果てて、筆者が参加する相談会を訪れたというわけです。