「乳酸菌・ビフィズス菌」が、じつは「胃がん・食道がん・大腸がん」のリスクになる驚きの理由【2022年上半期ベスト記事】
※情報は4月16日時点のものです。
過敏性腸症候群(略号はIBS)という病気がある。悪いものを食べたわけでもなく、ストレスもない。それなのにお腹の調子が良くない。社会生活に支障をきたすほどお腹に振り回される。日本人の有病率は約13%、罹患者数は1200万人と言われている。また、1990年頃から日本で急増している慢性炎症性腸疾患(略号はIBD:安倍元首相が罹患していた潰瘍性大腸炎とクローン病の2疾患)では、炎症が改善してもIBS症状を生じることがあり、IBSの治療が必要となる。
安倍元首相が苦しんでいたことでわかるように、原因不明で非常に治りにくい病気なのだが、どうも善玉菌と言われている乳酸菌やビフィズス菌がIBSを発生させているらしいのだ。腸内細菌の最新の知見を紹介する。

日本人のお腹のビフィズス菌はスペイン人の10倍!
最初に断っておくが、乳酸菌やビフィズス菌がすべて悪いといっているわけではない。過剰な摂取が問題で、日本人に本当にこれ以上の善玉菌が必要なのか? という話である。乳酸菌などの善玉菌が多すぎると腸内環境がかき乱され、IBSを引き起こしたり、悪化させる原因になるらしいのだ。
内科医として長らくIBS治療に取り組み、ご自身もIBSで苦しんでいる宇野良治医師に話を聞く。
「まず知っておいていただきたいのですが、日本人の腸内細菌と海外の人の腸内細菌を調べると、日本人は腸内のビフィズス菌が他国の何倍も多いんです」
乳酸菌と並んで善玉菌と呼ばれるビフィズス菌。乳酸菌と同じく乳酸を作り出す腸内細菌だ。ビフィズス菌をとりましょうとよく言われるが、実際には日本人の腸内にはなんとフランス人の2倍、中国人やスペイン人の10倍もビフィズス菌が棲みついているという。改めて摂る必要などないのだ(なぜ日本人だけこれほど多いのかは不明。日本はビフィズス菌のエサとなるオリゴ糖を添加した食品が多いからだろうと宇野医師は予測している)。
ではビフィズス菌を増やせば潰瘍性大腸炎や過敏性腸症候群が良くなるのか。日本人のIBS患者はスペイン人の10分の1なのか?
スペイン人と日本人の潰瘍性大腸炎とクローン病の患者数を比較したところ、日本では右肩上がりに患者数が増えている。ところがスペインではほぼ横ばいが続いている。
「IBSに関してはビフィズス菌が有効という研究もあり、患者さんにもビフィズス菌製剤が処方されています。しかし腸内の細菌量を調べた限り、関係ないのではないか――」
ビフィズス菌がIBSと関係するなら、スペインの方が日本よりも患者数が多いはずだが、むしろ少ない。さらに衝撃的なことを宇野医師は続ける。
「日本人は世界で一番、歯周病患者が多いのですが、2021年に中国の同済大学から出た論文では、歯周炎の唾液中にはビフィズス菌が有意に多いんです。日本人の腸の中にはビフィズス菌が世界でもっとも多い。これは病気として関連しているのではないかと考えられます」