日本と仲良くしたい韓国・尹錫悦新政権を苦しめる文在寅の「負の遺産」

韓国で尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が誕生して1ヵ月。韓国側から、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA、ジーソミア)早期正常化など、関係改善に前向きな声が出ている。だが一方で、日韓の首脳会談や外相会談の動きはなかなか見えてこない。背景に何があるのか。

大使館で観光ビザの発給を始めた尹政権

6月に入り、東京・麻布十番にある韓国大使館・領事部前の歩道に長い列ができていた。韓国政府が1日から観光ビザの発給を認めたからだ。初日に並んだ人は約400人。250人まで受け付けたが、それ以上は無理だった。翌日からは整理券を配り、1日150人まで受け付けることになった。ビザ発給までは3~4週間かかるという。

もともと、日韓の観光旅行は、新型コロナウイルスの感染拡大まではノービザが原則だった。このため、領事館は観光ビザを処理する体制になっていない。韓国政府内には「まさか、こんなに大勢の日本人が、韓国観光を楽しみにしていたとは思わなかった」(関係者)という読みの甘さもあった一方、ビザ発給による混乱を不安視する声が出ていたという。それでも、観光ビザ発給を強行した背景には、多少の混乱が起きても、観光ビザの発給を始めるという尹錫悦政権の強い指示があったという。

そもそも観光ビザの発給は日本人に対してだけではなく、全世界に向けたものだ。ただ、尹政権は同時に、羽田・金浦(キンポ)両空港を結ぶ路線再開を急ぐよう事務方に指示したという。何しろ尹錫悦大統領が自ら、5月10日の就任式に出席するために訪韓した日本側関係者に対し、「羽田・金浦路線は早々に再開します」「朴振(パク・チン)外相をこの路線を利用して日本に派遣します」と宣言していたという。韓国では、大統領の発言は絶対だ。事務方は必死で日韓路線の再開に向けて突っ走り始めた。

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日本政府の側といえば当初、この動きを半信半疑で眺めていた。そもそも羽田空港は一部、国際便の運航も行っているため、国外からの訪問客に対する検疫体制が整っている。ところが金浦空港は国内線に限っていたため、検疫のシステム整備や要員の確保から始めなければならない。尹大統領は当初、「今すぐにでも路線再開」という勢いだったが、事務方は「今すぐは無理だが、6月1日からは」「やはり6月1日からは厳しいので、6月15日から再開」などと走り回ることになった。

こうなると今度は、日本から国土交通省を中心に不満の声が上がった。日本は緩和したとはいえ、海外からの訪問客の上限を1日2万人に抑えている。羽田・金浦路線を再開しても、いきなりコロナ禍以前の体制には戻せない。日韓路線を1日何便飛ばすのか、それぞれの便には何人の搭乗を上限にするのか、といった細かな打ち合わせが必要になる。そんな話し合いもないうちに韓国側の動きが一方的に伝えられたため、国交省がへそを曲げ、一時は日韓の事務調整が滞る騒ぎになったという。

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