――日本だと制作費を集めにくいから、国際共同制作になったのですか?

早川監督:今回は、プロデューサーの水野詠子さんが「この映画はじっくりと時間をかけて作るべきだ」と最初から国際共同制作を計画してくださり、日本、フランス、フィリピン、カタールの4カ国で共同制作しました。撮影は日本で、ポスプロ(撮影後の編集作業)はフランスで行いました。脚本の段階から各国のスタッフに関わってもらい、様々な視点を物語に反映することができたと思います。

コロナで海外のスタッフは日本の撮影に立ち会えませんでしたが、毎日、撮影後に「こんなシーンを撮った」と報告して各国のスタッフとの情報共有を大切にしました。また、フィリピンのスタッフには登場人物に関するリサーチに協力してもらい、本当にみんなで作り上げた映画になりました。ビジネス面だけではなく、異文化交流というか、魂の交流というか……国際共同制作の醍醐味を知ってしまったから、次も国際共同制作をしたくなりました(笑)。

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過酷な労働環境でクリエイティビティは生まれない

――フランスは映画界を統括するCNCという国営機関があるので、映画の現場が非常に働きやすいと聞いています。ポスプロでも日本との違いを感じましたか?

早川監督:日本にもCNCのような、映画業界を管理する第三者機関が必要だと思います。予算がなく、短い期間で映画制作をすると、スタッフやキャストが本当に疲弊して、よいクリエイティビティが生まれにくい。いまの日本の映画界には若い人がすぐに辞めてしまう過酷な労働環境があります。それは現場だけの努力ではどうしようもなくて、業界全体が動かなければ変えられな。映画作りを支えている現場の人たちが救われないと、日本映画界の未来は明るくないと思います。

私は今回フランスでポスプロだけ経験しましたが、就業時間は1日8時間と決まっていて、ランチの時間もしっかりとります。労働時間が規定されていて、それを過ぎると追加料金が支払われるそうです。もちろん、予算にそってスケジュールが組まれているので、ある日に働きすぎたら他の日は休んで調整したりなど、明確にルールが守られています。子育て中のスタッフでも仕事ができるようにスケジュールが組まれており、それを可能にする予算が確保されているのです。日本でも業界全体でルールをきちんと決めて、違反者にはペナルティを求めるような体制が必要だと思います。

――ちなみに、毎日夕方6時に仕事が終わったら、フランスのみなさんはどんなふうに時間を過ごすのですか?

早川監督:映画を見に行ったり、家族や友達と食事をしたり、普通に生活を楽しんでいます。そういった心と時間に余裕があるからこそ、クリエイティブな仕事ができるんだと実感しました