ドイツ人の頭の切り替えの早さ
ほぼ3ヵ月ぶりにドイツに戻ったら、マスクが消えていた。
つい最近までは、空港の構内はマスク着用が義務だったが、それもなくなっていた。飛行機の中だけはマスク着用が義務付けられていたが、フランクフルト空港に着いた途端、入国審査のところまで通路を歩いている最中に、マスクを外してゴミ箱に捨てているドイツ人もいた。

今、ドイツでマスクが義務付けられているのは、ドイツで離着陸する飛行機内と遠距離列車の中、病院、老人ホームぐらいだ。ローカル線やバス、市電、および、店舗などでのマスク着用義務の有無についてはそれぞれの州に任されており、ほとんどのところでは、つけたい人はつければいいといった程度だ。
6月11日に大きなスーパーマーケットに行ったら、マスクをしていた人は50人に1人ぐらいの割合だった。
新型コロナが出現するまで、歯科医や外科医以外のドイツ人は、生まれてこの方マスクなど手に取ったこともないという人がほとんどだった。ところが2020年2月よりイタリアをはじめ、周辺国で感染者が多く亡くなり、しかも、新型コロナの正体や感染経路などについての正確な情報もまだほとんどなかったため、突然、感染予防法としてマスクが脚光を浴びた。
それどころか、ドイツではまもなく多くの場所でマスク着用が義務となり、警官がパトロールし、着用していない人間から罰金を徴収したのである。おそらく藁をも掴むという感じだったのだと思う。
ただし、当時でさえ、一部の例外を除いては、人混みの少ない戸外でのマスク着用義務はなかった。だから皆、マスクはお店を出た途端にさっと外して、顎にかけたり、ポケットに入れたりしていた。
ところが、そのうち流行が峠を越え、さらにオミクロン株への移行で重症者と死者が激減したことで、マスク義務は段階的に解除されはじめた。
思えば、つい最近まで、マスク義務どころか、ワクチン未接種者は、スーパー、薬局、ドラッグストア以外の店には足を踏み入れることさえ許されなかったドイツだ。各店舗やレストランの入り口はブロックされ、法律や州の条例に基づき、店員がワクチン証明を点検していた。
しかし、それらすべての規制がかなり唐突に解除された後の、ドイツ人の頭の切り替えはまことに早かった。用心のためにスーパーの中などで引き続きマスクを着用していた人たちの数も、急激に減っていった。
