2022.06.18
# 企業・経営

いま「転勤を強制しない」大企業が増加中…そのウラに隠れている「意外な落とし穴」

前川 孝雄 プロフィール

若者に嫌われるのは、こんな会社

なお社員が望まない転勤をなくそうとするAIG損害保険株式会社では、新卒応募者が約10倍伸びるという驚異的な副次的効果があったという。育児や介護や病気治療などのやむを得ない事情の少ない若者にとっても、個人の希望を尊重する会社に好感度が高くなることの象徴例だろう。

AIG損保では、厳密には新卒者は、入社後3年間は必要な経験を積むためにモバイル(転勤あり)としているが、その後はノンモバイルも選択できるという仕組みをとっている。このように、将来どこで働くかが個人の選択肢に移ることが、会社の好感度に影響しているのだろう。若者は、会社都合の強制人事は受け入れがたいと感じるようになってきており、働き方の自由度が企業選びの重要な要素になりつつあるのだ。

なお、こうした若者の意識はいまに始まったものではない。私が前職リクルートで就職・キャリア関連メディアの編集長をしていた20年ほど前、企業選びの視点に「地元で働ける」ことを挙げる若者は常に多数派を占めていた。

 

ただ、当時は、正社員として就職して転勤なしを実現するには地元中小企業しか選択肢はなかった。比較的高待遇で将来の安心が得られる大企業に正社員就職するからには、転勤は受け入れるしかないというのが相場であった。現代は、転勤なしも待遇・安心も、おいしいとこどりが可能になってきたともいえるかもしれない。

起点は、女性活躍推進、育児・介護や病気治療と仕事との両立支援などワークライフバランス施策への関心の高まりだが、いまや働く個人を尊重することが企業選択の重要要件となってきている。人事権を振りかざし、社員を掌握しようとする企業は敬遠されるようになっているのだ。就職人気企業であっても、この変化の潮流を軽視すれば、採用もおぼつかない時代に入ったともいえるだろう。

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