2022.06.24
# 世界経済

ナポレオン大陸封鎖令の大ブーメランに学ぶ経済制裁で自滅する歴史

今回もロシアの反逆が鍵になるか
大原 浩 プロフィール

大陸封鎖令の問題点

大陸封鎖令は、英国を経済的に孤立させ、その経済を疲弊させ(戦闘によらず)弱体化させることを狙ったものである。つまり現在米国(および西欧など米国追従国家)がロシアに対する「経済制裁」を行っているのと同じ意図があった。

さらに、当時産業革命で先行していて品質が高かった英国製品を駆逐。そして、フランスの工業製品を普及させ国内の工業を発展させる目的があったともいわれる。ロシアへの経済制裁がそれを意図したものであるかどうかは疑問の余地があるが、結果的に米国内のエネルギー、食料ビジネスは価格高騰によって大きな利益を受ける。

結局、大陸封鎖令は、概ね次の3つの問題点を抱えていたがゆえに上手くいかなかったと言われる。

1.フランスの産業(工業製品)が大陸市場を独占。他の国々の産業を圧迫、搾取することとなった(ただし後述のように闇取引が横行したので、意図したほどでは無かった)。

2.英国よりも(産業革命が遅れ)劣っていたフランスの産業資本家(製造業)にとっては有利であるが、貿易商人にとっては不利であった。

3.農業国であるロシア、ポーランド、プロイセンなどは穀物をイギリスに輸出し、工業製品を輸入して経済が成り立っていた。

 

1については、今回、米国のエネルギー・食料産業が(ロシアの代わりに)世界シェアを奪うという側面はある程度あるが、それ以上に、「エネルギー・食料」という生存に関わる物資が「米国の都合」で不足していることに、多くの国々は怒りを感じているはずである。

2については、原油や食料(工業製品)の価格が上がれば生産者(製造業)はそれなりのメリットがあるが、貿易業者はどこの国の製品を扱っても同じであるから、「貿易制限」には反対である。自由な貿易を求めるということだ。フランス国内でもやはり両者が対立した。

3については、大陸封鎖令でロシアからの穀物が入手しにくくなった英国は、確かにそれなりの打撃を受けたであろう。だが、現在ロシアは穀物も輸出しているが、エネルギーを欧州に大量に輸出している。

現在の欧州は米国の味方であるはずだ。その味方を苦しめる「ロシアへの経済制裁」は、ナポレオンの大陸封鎖令以上の大いなる愚策だといえよう。

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