
維新ぎらいより、立憲ぎらい⁉ 参院選「無風」は野党の責任ちゃうんかい! 大石あきこ×鮫島浩
『維新ぎらい』『朝日新聞政治部』W刊行記念(1)「ルーチン訪問」ってなんやねん
大石 私が勝手に「立憲仕草」って呼んでるんですけどね。例えば、「今日、どこそこの会合でご挨拶させていただきました」「今日はルーチン訪問でした」とかを写真付きで、毎日ツイートしてる候補者がいて。「盆踊り行ってきました」って現職議員もいましたね。どんな主張をしたのかは一切書いていない。いやそれ、上司への報告やがな。そんなもんはメールでやれよ、と。しかも「ルーチン訪問」されたほうも、ツイッター見たら「あ、私、ルーチン訪問されたんや」ってなって気ぃ悪いわ(笑)。

鮫島 そういう「やってるふり」の行動という意味では、「朝日新聞仕草」とも、言い換えられますね。
大石 やはり「朝日新聞仕草」もあるんですね(笑)。
鮫島 そっくりです。それらの仕草は、日本の「リベラル」と呼ばれてきた勢力がどういう人たちなのかを問うてます。つまり、個々人の力が弱い。私も主義主張はリベラルだと思いますが、それでも立憲の政治家より、意見の合わないはずの自民党の政治家のほうが会うと圧倒的に面白い。なぜなら、自民党の政治家は批判をすると、僕を取り込もうとしてくるからです。逆に、立憲の政治家は批判すると怒るんですよ。
大石 そういえば、議員立法の案の説明に自民党の議員が来たのですが、「人たらし」レベルが高いなとは思いましたね。結論としては反対しましたが。
立憲の議員にも、「僕、まめ男って呼ばれてるんですよ」とか言ってマメに依頼をしてくる人もいますが、批判したらイラっとした顔で帰るかたもおられます。連合(日本労働組合総連合会)とか大組織をバックにした人とかだと、そうなるのかな…(笑)。おっといけない、『維新ぎらい』を書いたのに、「立憲ぎらい」の話になってしまいました。
政治家はこうしてウソをつく
鮫島 そうですね(笑)。でも、大石さんの実直さがよく伝わってきます。いまではもう少なくなってきましたが、自民党の政治家はみんな人たらしだった。
大石 なんでなんですかね。
鮫島 人心掌握術ですね。特に古賀誠さんはすごかった。政治記者は政治家の家や事務所に何度も通ってようやく会ってもらえるようになるのですが、一生懸命取り入って、食い込んだぞ、心を開いてくれたぞ、と思ってからが大変なんです。古賀さんはそこから政治記者を情報戦の駒として使おうとするのです。いきなりウソなんて言わない。食い込んだと思って喜んでいる記者に、「これを話すのはお前だけだぞ」と前置きして、ウソをつくんです。

大石 うわ! そうやって自分に有利な情報を書かせるんですね。
鮫島 そのとおり。だから中途半端に食い込む記者がいちばん危ない。勘違いして取り込まれちゃうから。多くの記者は、政治家の本音が聞けるのは、記者会見よりもオフレコ会見だと思うし、一対一のサシだとさらに良しと。でも本当は逆で、サシが一番危ないのです。記者会見でウソを言うと政治家は公に批判されるが、オフレコやサシだと騙された記者の責任ですからね。とはいえ、食い込まないことには政治家の実像も見えてこない。これは政治家同士でも一緒ですよ。
大石 それ、わかります。政治家同士で飲みに行くような誘いが少なからずあるのですが、けっこう行くかどうかは悩ましいんですよね。政治家同士で仲良くしたくないという気持ちもあるし、騙されたり情報を抜かれるのも嫌だし。一方で、政治の世界では、情報やつきあいの中で吸収すべきこともあるかもしれない。距離の取り方が難しいですね。