米国はウクライナで台湾・朝鮮半島危機の予行演習を行っている

これが日本の脅威・中北露抑止の戦略か
阿久津 博康 プロフィール

米国は曖昧戦略を変化させた

今回のウクライナ戦は、台湾の政府および民心にも大きな影響を与えている。台湾民意基金会という民間シンクタンクが2021年10月に実施した調査によれば、台湾国民の65パーセントが米軍の参加を信じる(「少し信じる」を含む)と回答したが、ウクライナ侵攻開始後の2022年3月の調査では、その割合は34.5パーセントへと低下している。

しかし、台湾ではウクライナ侵攻のさらに前、香港情勢悪化で多大な影響を受けており、自国防衛の強化の努力を続けている。今回のウクライナ情勢を受け、この路線には一層拍車がかかっている。

他方、米国の台湾政策については、「従来の政策は不変」という公式の立場とは異なり、香港情勢悪化以降、新たな情報開示の方法による抑止力強化策をとり始めた。すなわち、従来はあまり明らかにされなかった、米特殊部隊の台湾におけるプレゼンスを、米国内の主要紙にリークし、米特殊部隊と海兵隊が台湾軍と軍事訓練に従事していることを報じさせた。

 

バイデン大統領が5月に来日した際に注目を集めたが、報道関係者からの台湾に対する米国の軍事的コミットメントについての質問に肯定的に回答し、一方で米政府が「従来の政策は不変」と釈明することも、もはやパターン化した感がある。米国が「軍事介入するかしないか曖昧」という従来の曖昧戦略は、「大統領の介入意思は明白」という形で、実質的に転換したといえよう。

また、台湾側でも、米国が米軍の台湾でのプレゼンスに触れるようになったことから、蔡英文總統自らが、台湾に米軍のプレゼンスを公にするようになっている。今や、中国の台湾への武力攻撃が台湾に存在する米軍へ及ぶ事態となれば、米軍の介入は必至となろう。台湾駐留米軍は、いわば「台湾版導火線(トリップワイヤー)」となり、中国は台湾に対し容易に手を出せなくなったように思われる。

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