米国はウクライナで台湾・朝鮮半島危機の予行演習を行っている

これが日本の脅威・中北露抑止の戦略か
阿久津 博康 プロフィール

中国は騒いでも手を出せない

一昨年来の中国による台湾周辺での軍事活動の顕著な活発化は、むしろこのトリップワイヤーへの反発である。つまり、中国は本丸である台湾そのものに対し軍事的に手を出せないが故に、台湾の近海および防空識別圏を激しく脅かすことしかできないでいる。

これはあたかも、朝鮮半島において米軍の存在故に北朝鮮による韓国に対する各種挑発行動が本格的な戦闘を惹起するに至らないようなものである。日本の尖閣諸島周辺での活動の活発化も、現時点では同様の文脈で生じているのかもしれない。もっとも、これについては見方が割れるであろうが。

特に、台湾周辺での米台共同軍事演習の頻度が上がったことが、中国に対する抑止効果を強化した側面は比較的明らかである。米軍および台湾海軍陸戦隊がグアム島で共同訓練を実施したり、それを台湾の邱國防部長が事実として認定するとともに、米国における台湾陸軍による後方支援に関する連絡事務處が存在することを明らかにする等、米台の防衛関係強化は、引き続き中国の行動を牽制していくであろう。

安全保障研究の観点から見れば、中国の台湾周辺、もっといえば我が国の尖閣周辺における活動の活発化は、米国のプレゼンスの強化に対する反発という側面が強く、むしろ台湾や尖閣への本格的な軍事侵攻には至るようなものではない。

 

つまり、本丸の周辺で軍事的緊張は高まるが、本丸自体は比較的安泰というわけである。しかし、逆にいえば、これは上部システムは安定していても、下部システムでは不安定な状況という「安定性・不安定性効果」に類似した効果が働いているということである。しかし、台湾や日本としては、結局周辺の不安定が常態化しているようでは、落ち着いていられないということになる。即ち、台湾も日本も、まさに「自ら助く」能力を強化する必要である所以である。

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