2022.07.04

【古生物学ミステリー】化石の突起が意味するのは、最古の"交尾"!?

更新し続ける過去の学問・シルル紀編

化石を手がかりに、科学技術を駆使して、古生物のさまざまな謎に迫る「古生物学」。それは、まさに"良質なミステリー"とも言える学問ですが、中でもその進化と滅亡、あるいは現在へに至る道程、「生命の歴史」は、とりわけ壮大なテーマの1つです。

好評の『カラー図説 生命の大進化40億年史 古生代編』から、古生物をめぐる歴史について、とくにここ十数年で得られた新たな知見に注目して、見ていくシリーズ。今回は、「シルル紀」から「デボン紀」の古生物たちを見てみたいと思います。

【図】年代区分シルル紀とデボン紀は古生代に属する(『カラー図説 生命の大進化40億年史 古生代編』より一部改編)

"板皮類"が熱い!

最近、絶滅したサカナのグループである"板皮類"の発見が相次いでいる。そのいくつかは画期的なものだ。

2021年には、中国科学院のチャン・リーたちが、中国南西部の重慶市に分布する約4億2300万年前(シルル紀の終盤)の地層から発見されたビアンチェンギクチス Bianchengichthysを報告した。この魚は、頭胸部を覆う骨の板の部分が化石として残った"甲冑魚"である。リーたちの分析の結果、なんとビアンチェンギクチスには、硬骨魚類と軟骨魚類、そして板皮類の特徴が確認されたのだ!

【イラスト】ビアンチェンギクチスの復元画ビアンチェンギクチスの復元画(illustration by yoshihiro hashizume)

硬骨魚類は私たちの祖先と目されているサカナのグループであり、現在でも大繁栄するサカナたちである。マグロでもサケでも、私たちになじみのあるサカナたちのほとんどは、このグループに属する。軟骨魚類には、サメやエイの仲間が属する。こちらも現在の海で繁栄を勝ち取っている。板皮類は、絶滅した甲冑魚のグループで、シルル紀の次のデボン紀の海で大繁栄する。

ビアンチェンギクチスには、こうした後の成功者につながる特徴がそろっていた。

軟骨魚類と硬骨魚類につながる"進化の兆し"

それよりすこし前の2013年に報告されたエンテログナトゥス Entelognahtusも板皮類の1つであり、その顔に硬骨魚類と軟骨魚類の特徴がみられた。この化石は中国雲南省に分布する約4億1900万年前の地層から発見され、ビアンチェンギクチスよりも進化的だとされている。

【写真・イラスト】ンテログナトゥスの頭胸部の化石と復元画写真(2点)は、エンテログナトゥスの頭胸部の化石。側面の拡大(左上)と背面(右)。それぞれ、白い線が1cmに相当する。左下のイラストは、エンテログナトゥスの復元画 photo provided by Zhu Min, illustration by yoichi fukunaga

つまり、シルル紀の終盤が近づいたころには、板皮類の中に、軟骨魚類と硬骨魚類につながる"進化の兆し"を持つ種が出現していたのだ。リーたちの研究によれば、板皮類は、軟骨魚類と硬骨魚類の共通祖先か、あるいはそれに近いサカナを含むグループと位置づけられている。

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