2022.06.23

奥多摩山中で26歳男性がバラバラ死体に…BBQと共に行われた鬼畜たちの「狂気の宴」

2020年9月24日、コロナ禍の最中、一人の男が「再逮捕」された。男の名は紙谷惣(46)。2003年に東京都奥多摩町の山中で男性の切断遺体が見つかった猟奇殺人事件の容疑者だったが、事件直後から南アフリカ共和国に逃げ、殺人容疑で国際手配されていた。

17年にわたる国外逃亡の裏で繰り広げられていた、警視庁捜査第一課との度重なる「駆け引き」。日本警察の面子を掛けた国際捜査の全貌を、当時事件を担当した警視庁捜査第一課元刑事、原雄一が明かす――。

著者の捜査チームが国際捜査の際に付けていたバッチ

海外逃亡被疑者

「国際手配中の『紙谷 惣46歳』が南アフリカから帰国」
「警視庁は逮捕監禁容疑で逮捕」

各報道機関は、新型コロナウイルスの感染拡大で生活苦となり、令和2年9月3日夕方、逃亡先の南アフリカ共和国から単独帰国した「紙谷惣(そう)」の逮捕を報じた。

“とうとう逮捕したか”捜査の一端に関わった私は、しばし感慨に浸った。

しかし、事件を深掘りした記事が見当たらないばかりか、誤報も散見される。それに続報も乏しいことに違和感を覚えた。

そして、いつしか報じられなくなったこの重要未解決事件。

私の脳裏には、平成23年の記憶が蘇ってきていた。

紙谷惣容疑者(1999年撮影)=警視庁ホームページから

この年の春、未解決事件の捜査を担当することになった私は、日本で事件を起こし、海外に逃亡している被疑者の追跡捜査を模索していた。当時、海外に逃亡していた被疑者は、日本人と外国籍を合わせ100名ほどいた。

また、このころ私は、海外に逃亡した被疑者を地道に逮捕していけば、いつしか犯罪者の間に、「日本で事件を起こして海外に逃亡しても、日本警察は地の果てまで追ってくる」という意識が浸透し、ひいては日本の犯罪を減少させられるのではないかと、突飛なことを考えていた。

ただ、日本警察が海外の地で直に捜査をすることはできない。そのため、被疑者の逃亡先である相手国の国家警察等に捜査を委ねたり、あるいは相手国の法律に照らして処罰を求めることになるが、それには、詳細な説明資料を作成して国内の関係省庁に理解と協力を求めた上、煩雑な手続きを経て相手国の当局と折衝していかなければならない。さらには、文化や法律が異なる相手国が、日本警察のリクエストを受諾するかは不透明である。そうした手間に嫌気して、海外における捜査に尻込みしてしまい、被疑者に海外逃亡されたならば、その所在確認を求めるICPO(国際刑事警察機構)手配をして捜査を打ち切ることが多かった。

でも、それでは日本警察が犯罪者に舐められるだけである。何とかしなければならない。

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  • 『神々の復讐』中山茂大