2022.07.02
# エンタメ

韓国からエンタメの熱風到来…ウェブトゥーンを正しく理解するために知っておきたいウェブトゥーン「前史」

日本では2021年からウェブトゥーン制作に多数の会社が参入しているが、韓国から「最近いきなり出てきたもの」と思われているなど、日本では歴史や文脈が間違えて伝わっていっている部分があるという。

『俺だけレベルアップな件』などのウェブトゥーンを制作するREDICEの日本支社長で、『盗掘王』『全知的な読者の視点から』などを制作するエル・セブン創業者エル・セブン創業者(現レッドセブン)のイ・ヒョンソク氏に韓国ウェブトゥーンの歴史を訊いた(全3回のうち第1回)。

※本稿執筆にあたりコミックポップ・エンターテインメントの宣政佑(ソン・ジョンウ)氏に韓国マンガ史に関する情報提供をしていただきました。

RED SEVEN公式サイトより
 

韓国は約10年ごとにマンガのビジネスモデルが変化してきた

イ・ヒョンソク 「韓国では紙のマンガが衰退してウェブトゥーンが出て来た」とよく日本では言われています。たしかに韓国では『ONE PIECE』ですら初版3万部程度、現存するマンガ雑誌は1000部程度という状況ですし、韓国のマンガ業界は長らく「1兆ウォン産業」(約1000億円)に到達するのが夢でした。ところが今ではウェブトゥーンだけで市場規模が1兆ウォン以上あり、2021年の全世界のアプリ売上の1位がTikTok、2位がYouTube、3位がピッコマ――言うまでもなくピッコマは韓国カカオページのビジネスモデルを持ち込み、日本のマンガだけでなくウェブトゥーンも多数配信しているサービスです――というくらいに大きくなりました。

――「韓国で紙のマンガが衰退した」という理解は、科学学習マンガの『サバイバル』や『Why?』が紙の単行本で全世界累計数千万部売れている現行作品であることを考えると間違いですが、ジャンルによっては紙発が退潮してほぼデジタルボーンになり、かつ、紙時代よりもはるかに市場規模が大きくなったのは事実ですね。

 ではウェブトゥーンの起源はどこにあるのか。僕は1970~80年代にあると見ていますが――一般的には「1998年から始まった」というのが通説です。

その話に入る前に、まず日本と韓国が大きく違う点から理解してもらいたいのが、韓国ではおおよそ10年単位でマンガ業界の勢力図やビジネスモデルが大きく変わり、作家もかなり入れ替わってきた、ということです。日本では「マンガ雑誌に連載してコミックス化する」というビジネスモデルが――売上の比重が雑誌中心からコミックス中心になるとか、紙に加えてウェブやアプリ連載も増えるといった変化はあるものの――基本的には半世紀以上ずっと続いています。対して韓国ではたびたびマンガの作品流通のシステム自体が変わり、それに合わせて求められる作品も変わってきました。

オンラインマンガが登場する前は、雑誌マンガの時代でした。韓国では1982年に月刊マンガ専門雑誌「宝島(ポムルソム)」が創刊、1988年には初の週刊少年マンガ誌「IQジャンプ」が創刊されるなどして、日本式の「雑誌で連載したのち単行本化する」というビジネスモデルが広がりました。

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