2022.07.05
# 国際

じつは戦争を望んでいた、憲法にNATO加盟を掲げた…?ゼレンスキー大統領への「大いなる誤解」を解く

ロシアによる軍事侵攻で、世界的に注目を浴びることとなった、ウクライナのゼレンスキー大統領。偉大なリーダーとして評価される一方、「本当は戦争を望んでいた」「憲法にNATO加盟を掲げた」などの誤解も見られる。ウクライナ研究の第一人者で、著書『本当のウクライナ』がある神戸学院大学教授・岡部芳彦氏が、こうしたゼレンスキー大統領に対する誤解を解くとともに、日本人が意外と知らない素顔に迫る。

デビューはロシアの芸能界だった

ヴォロディーミル・ゼレンスキーは、1978年1月、ドニプロ州のクリヴィー・リーフで生まれました。

キーウ国立経済大学クリヴィー・リーフ経済研究所で学ぶかたわら、学生劇団を結成、1997年、テレビのお笑いコンテストをきっかけに、チーム「クヴァルタル95」を立ち上げ、モスクワを拠点に活動します。つまり、ロシアの芸能界が彼の最初の活躍の場であり、芸能界を通じてその社会の裏側を垣間見たとも言えます。

2003年からはそのチームを制作会社化し、2005年ウクライナの「インテル」チャンネルでコメディーショー「ヴェチェルニー・クヴァルタル」を開始し歴代ウクライナ大統領の批判など政治風刺のコントで人気を博します。

2008年からラブコメを中心に映画にも出演し始め、2011年からロシアの歌手発掘番組で共同司会をし、同国でも人気を得ました。

2012年からウクライナのオリガルヒ(寡頭財閥)の一人イーホル・コロモイシキーが所有する「1+1」チャンネルに移籍して、2015年から自分が庶民的大統領を演じるドラマ・シリーズ『国民のしもべ』で高視聴率を獲得します。

そして2018年12月末、テレビで突然大統領選挙に出馬表明、翌年第一回投票において得票率約30%で首位、4月の決選投票で73%近い得票率で勝利しました。

大統領就任時のゼレンスキー(2019年5月)/Photo by Gettyimages
 

実を言うと、僕はゼレンスキーが出馬すると聞いた時、「そんなバカな」と思いましたし、あるウクライナの友人も同じような反応でした。

ではなぜ彼が大統領になれたのかというと、最大の要因はポロシェンコ大統領だと思います。政治家としてのキャリアも長いポロシェンコはしがらみを断ち切れずに、EUがその加盟条件として求める汚職対策は遅々として進みませんでした。

一方、反ロシア政策を強力に推しすすめ、長年の悲願であったウクライナ正教会の独立といった問題にも取り組みましたが支持率には結びつきませんでした。そこに登場したのが、政治経験ゼロのゼレンスキーでした。ウクライナでは、既存勢力との結びつきがないという意味で、政治経験がないことが評価されることがあるのです。

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