「BTS人気の過熱」と「アジア系へのヘイトクライム激増」が同時進行する理由

今、アメリカで何が起きているのか? (前編)
「活動休止」騒動で、BTSの人気はアメリカでもいっそうの盛り上がりを見せています。日本食や日本のアニメも依然として圧倒的な人気を集めており、アメリカにおけるアジア系文化の勢いはとどまることを知りません。一方で、新型コロナウイルスの感染流行以来、アジア系へのヘイトクライムが激増しています。アメリカにおいて、アジア系とはいったいどのような存在なのか。同志社大学教授の和泉真澄氏が前・後編の2回にわたって解き明かしていきます。(→後編「差別と憧れ」の歴史〜アメリカのアジア系への「愛憎」を深掘りする
ホワイトハウスに押しかけるARMY(BTSのファン)たち〔PHOTO〕gettyimages
 

極めて具体的な意図

世界的人気を誇るK-POPアイドルのBTS(防弾少年団)が2022年6月14日に突如、グループとしての活動休止とソロ活動への専念を発表し(その後、所属事務所が「活動休止」を否定)、世界に衝撃が走った。しかし、現在もMVの再生回数は増え続け、人気が衰える兆候はまったく見えない。

この「活動休止」騒動で、やや印象が薄まってしまった感もあるが、その2週間前の5月31日にアメリカのジョー・バイデン大統領に招かれてBTSのメンバーがホワイトハウスを訪れたことは、日本でも大きく報道された。

3月に配信されたソウルでのライブコンサートが191カ国、246万人に視聴され、4月には受賞こそ逃したもののグラミー賞に再度ノミネートされてラスベガスでも歌を披露した世界的スーパースターが、単なるセレブとしてホワイトハウスに招かれたとしても驚くべきではないかもしれない。しかし、このBTSのホワイトハウス訪問には、「アジア系アメリカ人のアメリカ社会への受容と新型コロナウイルス感染拡大によって増加したアジア系へのヘイトクライム防止について訴える」という、極めて具体的な意図が表明されていたことは注目に値する。

欧米のミュージシャンやパフォーマーが政治的なメッセージを込めたコンサートや活動をすることは珍しくないが、アジアのポップグループがこのような政治的パフォーマンスに関わることはやはり珍しいと言えるだろう。今回の訪問でBTSがどんなメッセージを発したのか、そしてアジア人であるK-POPアーティストをわざわざホワイトハウスに招待したアメリカ大統領にはどんな意図があったのか、そこから見える現代アメリカならびに現代世界を取り巻くさまざまな状況について考えてみたい。

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