文部科学省が令和2年に発表した「学校基本調査」によると、中学校に在籍している子どもの数は321万1219人で前年より6918人減少。公立中学に通う人数は294万1423人で前年より8908人減少している中、国立中学に通う子どもは2万2701人、私立中学に通う子どもは24万2095人で2989人増加している。

つまり、子どもの絶対数は減少しているが、中学受験をしている子どもの数が増加していることを意味している。小学校でも同様の傾向が見られ、小学校受験・中学校受験の人数増加は明らかだ。
もちろん、子どもの教育・学びは受験がすべてでは一切ない。ただ、受験しない=学びはどうでもいい、ということでもまったくない。小学生の頃、大手中学受験塾の落ちこぼれだった編集者が、「もっと勉強すればよかった」と心から思い、多くの素晴らしい学びを目の当たりにし、身をもって感じたこととは。

この企画が生まれた背景が!
 

受験塾に通う意味が理解できていなかった

「そんなに勉強しないと、お父さまとお母さまがお嘆きになるわよ」

小学6年生のとき、筆者は同じ塾に通う友達から、ズバッと言われたことがある。このときは公立小学校に通う同級生の口から“お父さま”“お母さま”“お嘆きになる”、という洗練された言葉が出たこと、その言葉をとても自然に使いこなしたことになにより驚いた記憶があるが、言われたことにはグウの音も出なかった。

筆者は東京都内に生まれ育った。当時は都内でも受験する人はそこまで多くなかった。
そもそも中学受験をしたいと親に言ったことはない。親からも受験をしないかと聞かれたれたことすらないのに、きょうだい割引があるという理由だけで学童替わりに姉が通っていた大手中学受験塾に通わされていたのだ。

本と漫画は幼い頃から山ほど読んで好きだったから、国語の点数だけでかろうじて入塾テストを通過したが、会員の中でも最下位のクラスだった。

教材は開いたことがないのでいつも新品同様。授業中はノートにずっとイラストを書いていた。理科の授業中に「わかる人!」と言われたとき、私以外の全員が手を挙げたため自分もあげたら見事に指されて立ち上がり、「……わかりません」と答えて、クラスメイトに失笑されたこともある。毎週日曜日に行われる週末テストではつねに低空飛行で、ビリから2番を取ったこともあった。つまりは完全なる落ちこぼれだった。

さすがにこれはしなかったけれど Photo by iStock

友達に会いに塾に通い、『王家の紋章』とか『うる星やつら』などのマンガの貸し借りをするのを楽しみにしていた。しかし受験が近くなるとやる気のない人は邪魔になる。そんなときに、冒頭の言葉を言われたのだった。中学受験について一言も言及しない両親が悲しむとは思わなかったが、確かに塾に来てもへらへらしている私の存在は邪魔になるな、とは強く思った。