ねつ造された「フェイク画像」を見抜く「ファクトチェック」の凄い最前線

写真に写った現代の肖像(4)

映像の真偽を見抜く技術の驚くべき進化

SNSを舞台に展開される現代のハイブリット戦争は、人間の脳内を支配する「「認知領域」での戦い」(廣瀬陽子『ハイブリッド戦争』講談社現代新書)だ。フェイクニュースによって人々を混乱させ、世論を分断することが攻撃の目的になる。写真や映像などのヴィジュアル情報は、この戦いの強力な武器だ。ヴィジュアルと文字情報の組み合わせは、文字情報のみの投稿より迅速かつ広範囲に拡散する。

そこで報道機関はこうしたフェイクに対抗すべく、ファクトチェックを行うようになった。その代表的な事例が、キーウ郊外の街、ブチャで起きた虐殺をめぐる報道の顛末だ。

侵攻開始3日後の2月27日から約1か月間、ブチャはロシア軍に占拠された。その間、住民への拷問や虐殺が重ねられ、400人以上もの犠牲者を出した。この事実は、街に入った欧米報道機関によって報じられた。ことに世界にショックを与えたのは、路上の各所に遺体が転がる凄惨な映像だった。

ロシア軍によって破壊されたブチャの街[Photo by gettyimages]
 

だがロシアは事実を認めず、遺体は自軍の撤退後にウクライナ側が置いたもので、映像についても独自のファクトチェックに基づいて捏造だと主張、虐殺行為を全面的に否定した。

報道機関はすぐさま反証した。口火を切ったのは4月4日付のニューヨーク・タイムズだった。同紙は、遺体は既に数週間も放置されていたとし、その証拠として3月中に撮影された衛星写真を掲載、BBCやAFPなど他の報道機関もこれに続き詳細なファクトチェック記事を発表した。

BBCの日本語サイトに4月6日付で掲載された「【検証】 ウクライナ・ブチャの住民虐殺 衛星画像がロシアの主張を否定」を見ると事実を立証するため、様々な種類の画像を照合している。今やファクチェックは受動的な検証に留まらず、より能動的な取材活動へと進化し始めているのだ。

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