6月終わりに、千葉県の高校のバレー部顧問がミスをした部員の顔にボールを数回投げつけてケガを負わせ逮捕される事件があった。5月には秀岳館高校サッカー部でコーチによる暴力があり、それを隠ぺいするための動画を監督の指導のもとに作っていたことも大きく取り上げられた。このような部活のみならず、学校の中に暴力や暴言による指導はいまだなくなってはいない。

長く教育の現場を取材してきたジャーナリストの島沢優子さんが、「子どものせいにしない教育」の現場を取材。子どもたちがこころを開き成長する学びとは。

島沢優子さん連載「子育てアップデート~子どもを伸ばす親の条件」今までの記事はこちら
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「どうせ私なんか、いらない人間なんだよ!」

教員を定年退職しているマキさん(仮名)は、公立中学校に勤務していたころ、女子生徒と女性教員の激しい口喧嘩を見かけた。

「でもね。それって、本当にこころが温かくなるようなケンカでした」

マキさんが勤務していた市立中学校の校区には、児童養護施設があった。親からの虐待などさまざまな事情を抱えた子どもたちが肩を寄せ合って暮らす場所だ。よって、施設から通ってくる生徒が各学年に数人ずつ在籍していた。

「壮絶な身体的な虐待を受けていたり、両親ともいるのにきついネグレクトにさらされた経験のある生徒などさまざまでした。春休みとか夏休みなど、長期休暇で親元に帰るのですが、戻ってきて登校してくるとすごく荒れ始める子もいましたね」

施設の職員には「(虐待を)反省してます」「子どもと一緒にいられる」と喜ぶ様子を見せる親から、実際に戻ると邪険に扱われる。そんなことが想像された。

中学2年生の担任だったマキさんは、ほかの担任たちと連携をとりながら「どうすれば、施設の子どもたちの成長を手伝えるのか」と毎日のように話し合った。

そんなある日の放課後。廊下から、大声が聴こえてきた。
「どうせ私なんか、いらない人間なんだよ!」