香港は一体誰のものか? 「返還25周年」の式典を見届けて改めて湧いた疑問

「一国二制度」が換骨奪胎されていく

香港は誰のものなのか

この御大が香港にやってくると、いつも「香港は一体誰のものか?」という疑問が頭をもたげてくる。御大とは、中国メディア式に記すなら、中共中央総書記、国家主席、中央軍委主席習近平である。

習近平主席が、6月30日午後3時10分、広東省深圳から高速鉄道に乗って、京港高速鉄道の終着駅にあたる香港西九龍駅に降り立った。元国民的歌手の彭麗媛夫人を伴っている。

この高速鉄道は、2018年9月23日に開通し、北京と香港を8時間56分で結ぶ、いわば「中国大陸縦断新幹線」だ。私は3年前に全線乗ったが、アジアで一番多忙を極める習主席がそんなことをするはずもなく、おそらくは深圳まで総書記専用機で飛んで、深圳北駅から19分だけ高速鉄道に乗ったのだろう。

 

私が深圳北駅に最後に行ったのは3年前だが、真新しい駅構内には、習主席の巨大な肖像画と、「交通強国」と書かれたスローガンが掲げられていた。

そこから高速鉄道に乗って香港西九龍駅まで行くと、中国大陸からやって来た観光客たちが、ホームに降り立って指を差していた。それは「香港西九龍」と大書されたプレートだった。

「はて、駅名を見て、なぜ中国人は驚くのか?」――すぐにハッと思い至った。中国の高速鉄道なら「香港西九龙」と「龍」の字が簡体字で書かれるはずだ。ところが香港では「香港西九龍」と繁体字で記されているのが物珍しいのだ。

Gettyimages

後に、この駅の事情に詳しい香港人の知人にこの話をしたら、笑って言った。

「高速鉄道の開通にあたっては、われわれと中国側との間で、ひと悶着あった。それは、入境の手続きをどこで行うかという問題だ。飛行機なら空港で行い、道路ならボーダー(境目)で行う。

高速鉄道の場合、中国側は、ボーダーで時速190kmの列車を止めたくないので、終着駅の香港西九龍駅に置くとした。だが香港側は、それでは香港の中心部まで中国大陸が『浸食』することになり、『一国二制度』に反するとして反対した。

結局、われわれの抵抗も虚しく、中国側に押し切られてしまった。そこで、『香港には大陸とは異なる龍が存在するのだ』ということを見せつけるため、『香港西九龍』の巨大なプレートを、駅のホームに掲げたのだろう」

だが、CCTV(中国中央広播電視総台)のカメラが、そんな「香港人の矜持」を写すはずもなく、アップしたのは「国家好 香港更好」(国家が好ければ香港は更に好くなる)と書かれた紅い横断幕。それに御大と御夫人だった。

習主席夫妻の後、少し間を置いて降りて来たのは、丁薛祥党中央弁公庁主任、許其亮中央軍事委副主席、沈躍躍全国人大常委会副委員長、王毅国務委員兼外交部長、夏宝龍国務院港澳事務弁公室主任らだった。

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