それでも「台湾人は中国人ではない」と主張するのは無理がある

保守派がそう言いたい気持ちはわかるが
アメリカと中国で最も対立が鮮明なのは台湾問題だ。7月28日のバイデン大統領と習近平国家主席の電話会談では対話継続を確認したものの、予断を許さないことに変わりはない。そのような対立の中、日本の保守派論客の中には、台湾人は中国人ではないと主張する人々がいる。それは正しいのだろうか。古来から現代まで続くアジア諸民族の闘争をトータルに捉えた宇山卓栄氏の話題書『民族と文明で読み解く大アジア史』(講談社+α新書)から抜粋してご紹介しよう。

保守派の言い分は正しいか

保守派の日本人論者を中心に、台湾人は中国人ではないと主張されています。彼らは、台湾に渡った中国人の大半が何らかの形で、先住民族と混血したことを根拠に、「台湾人は中国人ではなく、マレー・ポリネシア系(オーストロネシア系)の原住民の子孫である」と言います。

保守派は、17世紀の後半以降、中国大陸から台湾に渡った中国人は先住民族の中に消えたと主張しています。なぜなら、彼らは男ばかりで家族の帯同を許されておらず、その一部が先住民族の女性との混血児をもうけた場合、中国人の血は2分の1となり、さらに、その子が先住民族との間で混血児をもうけた場合、中国人の血は4分の1となり、さらに、その子が混血児をもうけると8分の1、以下同様に16分の1、32分の1というように幾何級数的に減少していき、中国人の血は原住民の中に消えていくと説明するのです。

まず、中国大陸から台湾に渡った中国人が男ばかりで家族の帯同を許されていないというようなことは根拠がなく、史料にも記されておらず、事実とは言えません。

 

台湾人の学者の中にも、台湾人は血統上、中国人ではないと主張する人がいます。沈建徳・元中興大副教授などがその代表です。統計学を専門とする沈建徳氏は著書『台湾常識』や『台湾血統』の中で、清王朝に征服される以前の1661年の台湾の人口は約60万人であり、19世紀初頭に約190万人となったと指摘しています。150年で3倍以上に人口が増えたのは大量の中国人移民があったからだと一般的に解されているものの、沈建徳氏によれば、この程度の人口増加は大陸からの人口流入がなくても、台湾内の先住民族が自律的に人口増加した結果とみなすことができるとのことです。

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