誰の中にも、モンスターになる要素は潜んでいる

現在公開中の主演映画「神は見返りを求める」で、ムロさんが演じているのは、岸井ゆきのさん演じる底辺YouTuberゆりちゃんのチャンネルを、見返りを求めずに手伝うイベント会社社員の田母神。最初は、「見返りなんていらない」と、まるで神様の如く無償の愛を提供していた田母神だが、信頼していた仲間の嘘にも騙され、人気YouTuberの仲間入りを果たしたゆりちゃんから冷たくあしらわれるようになると、一気に「見返りを求める男」へと豹変するのだった。

ムロさん自身が、初号の試写を観て、「『演じている自分』にここまで腹立ってムカついたこともない」「無様な姿をここまで憐れんだこともない」と感じ、吉田恵輔監督に対して、「あなたはすごいです」と伝えてしまったほど。この映画をすでに観て、あれほど善人だった田母神の豹変ぶりに、人間の持つ弱さや醜さを突きつけられ、「幽霊よりも、生きている人間がよっぽど怖い」と、背筋が凍った人も多いのではないだろうか。

ムロさんによれば、善人(神)から悪人(悪魔)への切り替えは、決して計算された演技ではなく、相手役からもらったものを受け止め、それに対するリアクションとして生まれたものだという。

(c)2022「神は見返りを求める」製作委員会
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「僕自身は、新しい役を演じるときは、いつも『こうしよう』とは固めずに現場に臨むのが基本です。今回はとくにその傾向が強かった。田母神も、本人が変わる前に、周りが変わってしまって、自分に向かってくる不幸や不運、嘘が積み重なって、その結果として復讐の鬼と化してしまう。元々、『頼まれたら断れなくて仕方なく』というよりも、本当に『やってあげなきゃ』という、本当の善意を持っている男だったから、逆に、周りの嘘が見抜けなかった部分もあったと思います。

ゆりちゃんと自分だけだったら、感情までは破壊されずに済んだと思うけれど、若葉竜也くん演じる梅川という存在が、これまた邪悪なんです(笑)。田母神とゆりちゃんの両方に嘘を言って、二人の信頼関係を引き裂いていく。でも、それまでできる限り尽くして、心を許していた相手から邪魔者扱いされたら、いくら善人でも、傷つくし、悔しいし。その悔しさをなんとかして晴らしたくて暴走するのは、誰の中にも潜んでいる、モンスター的な要素なのかもしれません」

撮影/張溢文