APU学長・出口治明氏が脳卒中からのリハビリにも挫けなかった理由

リハビリも「元気で明るく楽しく」

2021年に脳卒中を発症し、後遺症に見舞われたAPU(立命館アジア太平洋大学)学長の出口治明さん。歩くことも話すことも困難な状況から、持ち前の楽観主義で落ち込むことなく元気にリハビリを続け、ついに校務へ復帰しました。新刊『復活への底力 運命を受け入れ、前向きに生きる』より、出口さんのリハビリを支えたポジティブな思考の秘密に迫ります。

希望は学長職への復帰

急性期病院からリハビリ専門病院にくると、1日3時間のリハビリが始まり、体力が落ちている病人にとってはそれなりの負荷になります。だから転院したばかりの頃は疲れてしまい、リハビリが終わるとベッドに倒れ込むように寝る患者も多いそうです。

僕も転院して1週間ほどたった頃、非常に疲れがたまってきました。

 

「リハビリにお迎えに行っても元気がなく、身体もちょっと不安定でいつもよりシャキッとしていない感じがあったので、おそらく急に疲れが出てきてしまったのでしょう。ここで落ち込んでしまう可能性もあるかな、と思いました」(言語聴覚士の瀬尾さん)

転院した当初の僕の希望は学長職への復帰で、「退院する6ヵ月後に講演ができ、別府へ単身赴任できる」水準に身体と言葉の機能を取り戻すことでした。

しかし当時の僕の状態は、希望からは遠くかけ離れていました。それは客観的な指標にも表れていました。

身体と言葉のリハビリ

リハビリの分野で使用されている、患者の日常生活に関連する動作を評価する方法にFIM(Functional Independence Measure)があります。日本語にすると機能的自立度評価表で、生活動作に関連する全18項目をそれぞれ7段階に分けて数値化するものです。

全18項目のうち13項目が食事や移動などの運動機能、5項目がコミュニケーションなど認知機能に関するもので、評価「7」が自立、「1」が全介助となります。点数が高い方が自立度は高い、ということです。

リハビリ開始時点で僕のFIMの点数は、運動機能が91点満点で30点、認知機能が35点満点で15点。全項目で126点満点中45点という状態でした。

一方、日本の代表的な失語症の検査に標準失語症検査があります。聴く、話す、読む、書く、計算の5項目について26の下位検査で構成され、それぞれの答えられる割合を調べるというものです。

たとえば、言語聴覚士が読み上げた言葉の絵カードを選んだり、カードに描かれたものの名前を言ったり、単語や短い文章を読んで理解できるかなどを調べていきます。

僕はこの検査を転院する1週間ほど前に、福岡の病院で受けました。その結果は、26項目中19項目で正答率がゼロというさんざんなものでした。

「たとえば『鉛筆を持ってください』という設問はできても、『鉛筆を取ってからはさみと入れ替えてください』と単語や動詞が増えると混乱してしまう」(瀬尾さん)という状態でした。

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