ボディポジティブなメッセージをSNSや記事で発信し人気を集める、プラスサイズモデルの吉野なおさん(モデル名:Nao)。外見にコンプレックスがあったり、食べ物とうまく付き合えないことに悩んでいる人たちに、なおさんの発信は大きな支えとなっている。

今回は、先日亡くなった実父の介護と死を通して、なおさんが体験したこと、感じたことを寄稿していただいた。

以下、吉野なおさんの寄稿です。

 

介護崩壊と父の死

4月某日、半年ほど入院していた父が亡くなった。

悲しみや喪失感の一方で、肩の荷が降りたような複雑な感覚になった。私はしばらくのあいだ落ち込み、そして回復することができた。もしも今、何らかの理由で落ち込み、回復できないままの人がいたら、私の経験がもしかしたら役立つかもしれないのでシェアしてみようと思う。

気難しい性格だった父は、家族の中でなぜか私にだけは心を許していた。両親の相性は良好ではなく、他の兄姉には話しかけることさえしないのに、私にはよく「次はいつ実家にくるんだ?」とわざわざ電話をかけてくるほどだった。数年前からは認知症の症状が出始め、出かけて迷子になった父を探しに行ったこともあった。実家に帰ったときは散髪したり爪を切ってあげたり身の回りのケアを私がやるようになった。

日々の生活では母が父の介護をしていたが、老老介護になるうえに、しょっちゅうトラブルが起きる地獄のような状況で、ぶっちゃければ介護崩壊していた。

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持病も相まって「出来ないこと」がどんどん増えていく父。「お金をかけるぐらいなら私がやる」「家に人を入れたくない」と介護サービスの利用を拒否しながらも、父の愚痴をこぼす母。そんなふたりの間にはさまれた私は、「なんとかしないと。でもどうすれば?」とずっと悩んでいた。年金暮らしの両親に対して金銭的な援助もしていたが、そのことも限界にきていた。