2022.07.18
# ライフ

母のデイサービス拒否で人間関係が崩壊…22歳から7年間「ひとり介護」した「若者ケアラー」の悲劇

若くして祖父母や、両親の介護を担わざるをえなくなった「ヤングケアラー(若者介護者)」が、近年、社会問題となっている。日本では18歳からおおむね30歳代までのケアラーを「若者ケアラー」と呼び、今回ご紹介する拓真さん(29歳)もその一人だ。

拓真さんの一番の悩みは、要介護者である母親がデイサービスに行ってくれないこと。そのため、拓真さん一人にかかる負担が大きく、ついには精神疾患を発症してしまったという。その壮絶な日々を、おばあちゃんは、ぼくが介護します。』の著者、奥村シンゴさんがつづる。

22歳から7年間、母を一人で介護

拓真さんは、関東出身の29歳。父親、母親、次男、三男の5人家族でした。2015年のある日。母親と一緒に買い物へ行った時、母親が突然体に異変をきたし路上で倒れました。

「拓真、急に起き上がれなくなった。ごめんだけど、救急車呼んで」(母親)

拓真さんは、母親の急病に動揺しつつも救急車を呼び、病院へ直行。医師から「脳出血です。呂律が回っていません。一命はとりとめましたが、両足が麻痺する可能性が高いです」との診断を受けました。

Photo by iStock
 

脳出血は、脳の動脈が突然破れて出血が起こり、脳を破壊したり圧迫したりして、いろいろな症状が現れる病気です。脳細胞が壊れることで、意識障害、半身麻痺、感覚障害、言語障害などが見られる場合があります。

母親は、治療とリハビリを経て退院したものの介護が必要になり、在宅介護か施設に預けるか決める必要がありました。

拓真さんは、父親、次男、三男に母親の介護の協力を求めました。ところが、父親からは「新型コロナウイルスの影響で会社が経営難に陥って、収入が激減して自分のことで精一杯なんだ。お前が面倒みてくれ」と断られました。

続いて、次男は仕事をせず遊び回る生活にもかかわらず、「(拓真さんは)長男だろ、面倒みろよ」と介護放棄。さらに、三男は遠方で仕事をしているため協力できず。

拓真さんは、昔から母親っ子で「お母さんのためだ。とりあえず30歳までは介護してみよう」と決意し、一人で介護をする若者ケアラー(18歳からおおむね30代までのケアラーのこと)生活が始まりました。

母親は、退院後、要介護認定で「要介護1」と判定され、日常生活のさまざまな部分で拓真さんを頼りにしました。

拓真さんは、洗濯、朝食の用意、病院の付き添い、掃除、話し相手などさまざまなケアを続けました。

「母親は、両足の麻痺で思い通りに行動できず、機嫌が悪い時はほぼ一日中八つ当たりをします。話し相手をするのが辛いですね。でも、自分もストレスがたまっていて言いすぎたと後で反省します」(拓真さん)

筆者は、32歳から認知症の祖母と精神疾患の母を計10年、一人で介護していたので、拓真さんの母親への複雑な心境が理解できます。

介護といえば、排泄処理、食事介助、入浴介助など、身体介助が大変というイメージを持つ方が多いです。しかし、身体介助と同程度にしんどかったのは、「ケアの愚痴や他人の悪口を聞き、相槌を打ち続ける」感情的サポートでした。しかも、認知症が中程度以上になると、朝から夜まで同じ話が50回以上繰り返されます。

もう限界と何度も思いつつも、本人と一日でも家で一緒に過ごしたい気持ちもあるのです(詳しくは、著書『おばあちゃんは、ぼくが介護します。』に記載しています)。

SPONSORED