2022.07.10

いまさら聞けない、ウクライナ人とロシア人の「民族的起源と国家の盛衰」

民族と文明で読み解く世界史【前編】
宇山 卓栄 プロフィール

コサックが民族の原点

この時期、ウクライナから南ロシアの各地に、コサックという騎馬武装集団が現れます。コサックは元々、トルコ人の馬賊たちでした。「コサック」はトルコ語で、「自由な人」を意味します。

トルコ人馬賊に、モンゴル人も加わります。このモンゴル人は何らかの理由で、モンゴル正規軍から離れた者、正規軍に不満を持っていた者、或いは、正規軍に最初から属さず、馬賊として活動していた者などです。

コサック・ママーイ。コサックの理想像(Wikipediaより)

当初、コサックはトルコ人やモンゴル人のアジア系の混成集団でしたが、ウクライナ人などのスラヴ人もコサックに加わるようになります。ウクライナ人の一部はモンゴル人支配を嫌い、自らコサックの一団に参入することにより、モンゴル人に抵抗したのです。

こうして、黒海に注ぐドニエプル川やドニエストル川流域で、無数のコサック集団ができ上がります。

 

コサックはトルコ人集団をベースにしながら、モンゴル人やウクライナ人、ロシア人を取り込んでいき、多層な混血民族集団へと変化していきます。

ウクライナ人の愛国主義者たちは、モンゴル人やロシア人に決して屈することのなかった誇り高いコサックこそが自分たちの民族の原点であると主張します。ウクライナの国歌の歌詞には、「我らは自由のために魂と身体を捧げ、兄弟たちよ、我らがコサックの氏族であることを示そう」とあります。

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