通常の雷雨と線状降水帯、どうちがう?

甚大な被害をもたらすしくみ

前項〈【線状降水帯】納得の名称由来「なるほど、確かに線だ!」〉では、2020年の豪雨を例に、その発生状況を、天気図や画像などのデータから追ってみました。では、線状降水帯とは、どのようなしくみで起こるのでしょうか? 一般的な雷雨とどう違うのでしょうか?

気象災害に備えるためにますます重要になる天気予報のしくみを解説した『図解・天気予報入門』の著者である、気象コンパス・代表の古川武彦さんと、サイエンスライターの大木勇人さんに、引き続き解説してもらいました。 

通常の雷雨の構造

まずは、通常の積乱雲の集団による雷雨について見てみましょう。

積乱雲の集団によって起こる雷雨を集団性雷雨といいます。集団性雷雨には、集団のでき方が異なるいくつかの種類がありますが、図3に示したのは、マルチセル型と呼ばれる、よく見られる種類の集団性雷雨の構造です。「セル」というのは、雷雨をもたらす積乱雲1個を示し、「マルチセル」は「多重セル」の意味です。

【図】一般的な集団性雷雨(マルチセル型)の構造図3 一般的な集団性雷雨(マルチセル型)の構造(『図解 天気予報入門』より)

マルチセル型の発達した集団性雷雨では、強い雨や雹(ひょう)、突風などが生じ、天候の急変をもたらすので、近年ではゲリラ豪雨などと呼ばれることも多いです。大気が不安定なときなどによく発生する集団性雷雨です。

1つの積乱雲(セル)は、「成長期」「成熟期」「減衰期」の3つの段階があり、「成長期」で雲が発達、「成熟期」で激しい雨になります。成熟期の激しい雨のときは、降水と一緒に冷たい下降気流が生じ、この冷たい下降気流が地上にぶつかって周囲に広がり、ガストフロントと呼ばれる局地的な前線を形成します。

セルの集団「集団製雷雨」。でも線状降水帯とは違う

ガストフロントの冷気は、地上にあった暖かい空気の下に潜り込んで持ち上げるので、上昇気流を発生させ、新たなセルをつくります。このように、積乱雲が発生させるガストフロントによって周囲に新たなセルをつくり、積乱雲の集団となったものが一般的な集団性雷雨です。

加えて、マルチセル型の場合は、新たなセルが生じる場所が、決まった方向──図3ではピンク色の矢印で示した左の方——へと進んでいきます。「成長期」「成熟期」「減衰期」の3つのセルが順序よく並ぶことで、一定方向に生成と消滅を順序よく繰り返し、ある程度の持続性のある雷雨をもたらします。

ただし、激しい雨の降る領域は常に移動していくので、雨が激しくても長時間になることはありません。セル1個が激しい雨を降らせる成熟期は30分程度です。みなさんも、ゲリラ豪雨と呼ばれるような激しい雷雨を経験しても、30分程度であったことが多いのではないでしょうか。

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