安倍晋三死すとも中国包囲網は死せず―習近平中国、泥沼の外交的閉塞

最初は安倍無視だがのち完全に立場逆転

中国封じ込め、花開く「インド太平洋構想」

こうなると当時の安倍首相は、中国と習主席にとってはもはや無視できるような存在でもなければ、上から見下ろすような存在でも全くなくなった。

安倍首相はその時点では既に、普遍的価値観に基づく中国包囲網形成の中心人物の1人となって、中国にとっての手強い好敵手となっていた。

そして2021年6月にイギリスで開かれたG7サミットでは、安倍首相とバイデン米大統領、ジョンソン英首相(当時)の連携プレイにより、中国問題が議題の中心となって、対中国政策における先進7ヵ国の結束が図られた。

会議後の首脳声明は、習主席の一帯一路構想に対抗して、価値を共有する中低所得国に質の高いインフラ支援を行うプランを発表する一方、人権問題では名指しての中国批判を行なって、台湾海峡の平和と重要性に対する懸念をも表明した。

その時の安倍首相は習主席にとっては、もはや、手の届かない国際政治の大舞台で活躍し、中国の覇権主義戦略の推進を阻むような高い壁となっていたのではないか。

安倍首相が進めた「インド太平洋構想」が具体的な形となったのは実は2020年10月、本人が病気を理由に退陣した1ヵ月後のことである。

 

10月6日、発足したばかりの菅義偉政権の足元の東京に、日米豪印の4ヵ国外相が集まって会議を行い、中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」を守るための連携形成を宣言した。

それ以来の数年間、4ヵ国の外相や首脳は会合を重ねるたびに連携が強化されて、「QUAD」と呼ばれる4ヵ国参加の枠組みがすっかりと定着し、インド太平洋における中国包囲網の基軸となった。

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