夏休み直前のこの時期、子どもたちの荷物がとんでもないことになっている。小学生は普段から重い荷物を持って通学しているが、とくに長期休みの前には絵具や画板、習字道具、算数セットなどが入ったお道具箱、図工の作品に、学校によっては育てている朝顔の鉢まで持ち帰るよう言われるからだ。

この酷暑の中、パンパンのランドセルの両端にいくつも袋をぶら下げて、水筒を肩から斜め掛けし、両手に大荷物を持ってヨロヨロしながら歩く小学生のすぐ横を、猛スピードで走っていく車……。見ているだけでヒヤヒヤするし、かわいそうで怒りさえこみあげてくる。

ところが、2022年4月にランドセルにキャスターをつけて引っ張って持ち歩ける器具を小学生が開発したニュースに、一部の大人たちから「かえって危険」「子どものうちからラクをしようとするな」などと辛辣なコメントが寄せられたという。

はたしてこうした大人たちの辛口意見は「まっとう」なのだろうか。以前から、記事で子どもたちの重たい通学バッグ・ランドセル事情について取材しているライターの若尾淳子さんが、ときに自分の体重以上の荷物を背負って険しい山中を縦横無尽に歩き回る荷物運びのプロである「歩荷(ぼっか)」さんに、重たい荷物を背負うことのさまざまなリスクと対策について話を伺った。

以下、若尾淳子さんの寄稿です。

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ランドセルなら「両手が空く」なんて、幻想!

前回、子どもの通学バッグの記事を書いた後、ランドセルの両サイドにキャスターつきの支柱を取り付け、スーツケースのように引っ張って持ち歩ける器具「さんぽセル」の登場を知った。しかもそれを開発したのはなんと小学生! 思わぬ事故が起きないか、ふざけて友達のランドセルに乗ろうとする悪乗りが起こったりしないか、元小学生男児の母としては少々心配になる点もあったが、それでも『自分たちの問題を自分で解決しよう』とする姿勢に素直に感動した。

ところがこのニュースを知った大人からは、批判が相次いだ。「健康増進・体力強化のためにも道具に頼るべきではない」「ランドセルなら両手が空くが、キャリーを引いたら危険」などなど。それに対して、小学生側もしっかり反論。なかでも、小学1年生の平均体重が20キロなのに対し、通学時のランドセルの重さは平均6キロ。これを60キロの大人の体重に換算すると、18キロに相当することから「じゃあ大人も18~20キロの灯油缶を背負って毎日30分歩いて両手が空いているから安全ですって先生や大人が笑って自慢したら許します。きっと地獄です」という開発した小学生の言葉に何度もうなずいた。

そもそも「ランドセルなら両手が空いて安全」というのはとんでもない幻想だ。コロナ禍で多くの小学校の給水器は使用禁止になり、子どもたちは重い水筒を毎日持っていくし、体操服、上履き、給食着、絵具セットなどランドセルに入らず、サブバッグが必要な荷物が毎日のようにある。それに加えて問題なのが、ICT教育として全国の児童に配布されたタブレット。なぜか手提げ型ケースに入れて持ち歩くことになっていて、ランドセルに入れてはいけないという学校も。家で毎日充電してくる決まりなので、学校に置いては帰れない。

背中に重たいランドセルに手にも大きなサブバッグ。私立の小学校だとこの大荷物で満員電車に乗ることになる。photo/Getty Images

これで雨が降れば当然、傘を持つので両手がふさがってしまう。「ランドセルなら両手が空いて安全……」なんて、教科書が小型で薄く(※1)、なんでもかんでもランドセルにぎゅうぎゅう詰め込むことができた、おおらかな時代の『昔話』なのだ。

※1:現在教科書は巨大化。昭和時代はB5サイズが中心だったが、現在はB4・A4の大判サイズが中心。中身は総カラーで紙質も変わり1冊の重さも増加。さらに科目も細分化し、持ち歩く冊数が増えているため、当然総重量も重くなっている。