家庭が崩壊し離婚率も高い…SPたちの「過酷すぎる現実」

薄給で激務なのに…

本記事では、前編記事『エリートなのに報われず悲惨…SPになるための「狭き門」』に引き続き、過酷で時に残酷な結果をもたらすSPの仕事の実態に迫る。

家庭が崩壊するケースも

たとえば警視庁の場合、首相の警護に従事しても特別な手当がつくわけではない。捜査一課や鑑識課などと同じ、日額550円の「捜査等業務手当」がつく程度なので、SPだからといって必ずしも高給とはいえない。

またSPといえば、捜査一課と並んで不規則な勤務や長時間労働がよく知られている。警視庁に23年在籍し、主に公安部外事課でスパイ・テロ対策を担当していた「オオコシセキュリティコンサルタンツ(OSC)」の松丸俊彦氏が話す。

「統計があるわけではありませんが、『警護課は忙しすぎて家に帰れないので家庭崩壊し、離婚率が高い』と警察内ではいわれています。ですから、いざSPになったものの、他の部署に出てしまう人もいます」

交番のお巡りさんであろうが、白バイ隊員であろうが、SPであろうが、出世を目指す場合、同じ昇任試験を受けて合格すれば、階級は上がる。昇任試験に受かるかどうかは本人の努力次第であって、いくらSPが命懸けの激務だからといって、出世が早まることはない。勤務時間が長いSPは試験勉強する時間が限られる。そのためか、SPにとっての一番の出世は、警察署長ではなく、警護課長になることだという。

「経験豊かな人たちは指導的な立場に回り、デスクにつく。勤務割をつくったり急遽警護要請が来た際、SPを割り当てて派遣しています」(松丸氏)

先述の通り、SPになるには身体的な条件が設けられ、実際、身体能力の高いメンバーが集まっていることから、たしかに世間的には「SPはカッコいい」というイメージを持たれがちだ。

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しかし、報酬もさほど多くなく、出世にも有利とはいえず、家庭が崩壊するほど仕事がハードなため、警察内でもいわゆる「花形の部署」とはされていない。

そもそもSPの場合、大事件の捜査を受け持つ捜査一課と違って、何をもって手柄を上げたと評価すればいいか、判断が難しい。たとえば警護している要人の命を危機一髪、救ったとしよう。しかし、そうした大ピンチの状況を招いたことが、SPの失策と見ることもできる。

「何かが起きたこと自体、どこかに問題があったわけです。問題が起こらなければ、SPは目立つことがありません。SPにとってはそれがいちばんいいことであって、結局、そうした中でモチベーションを保ち続けることが、SPの使命なのです」(元警察官で、映画やドラマなどの監修を行っている古谷謙一氏)

人間であれば、相手との相性が合わないということはよくあるもの。しかしSPならば、どんなに嫌いな警護対象者であっても「愛さなければならない」というのは、民間SP会社「IMSP」代表の牧村博一氏だ。

「好き嫌いの感情はもちろんありますが、それに振り回されていたらSPの仕事は成立しません。たとえば、もし自分の奥さんや子どもに車が突っ込んできそうだったら、身を挺して守りますよね。それは愛しているからにほかなりません。警護対象者に少しでも『コイツ嫌だな』という思いがあったら守ることはできないので、私の場合、警護対象者の好きなところを少しでも見つけて警備するようにしています」

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