女性専用車両は「男性に対する不当な差別」「男性蔑視」なのか? そうではないと言える理由

「形式的な差別」と「不当な差別」

「女性専用車両は男性差別ではないか」といった疑問を見聞きすることがあります。性差別を扱った授業でもこの種の疑問が出されることはありますし、SNSでも見かけることがあります。

確かに、同じ運賃を払っているのに車両の一つに乗車できないことは、不平等な不利益扱い、例えば機会の制約だと言えます。またそれが、性別という本人が変更困難な特徴に基づいていることも典型的な差別に似ています。

しかし、それは本当に「不当な差別」だと言えるのでしょうか。本稿では女性専用車両について検討し、それが不当な差別かどうかを考えます。先に結論から言えば、女性専用車両は男性に対する不当な差別だとは言えません。以下ではその理由を丁寧に考えていきます。

〔PHOTO〕iStock
 

まず一般に、変更困難な特徴に基づく不平等な不利益扱いは、形式的には差別だと言えますが、つねに不当だとは言えません。

例えば、サッカーのプレミアリーグの試合で、警備員や機動隊がフーリガン対策として「若い男性」の集団を特にマークしたり*1、スタジアム外でも警官が若い男性を特に監視し、職務質問の対象にすることがあります。また、視覚障害の受験生の試験時間を別途設定するケースがあります。親が自分の子を優遇すること、保険会社が若い男性の自動車保険料を事故率に応じて高く設定することや*2、高齢者への運転講習の義務付けなどもあります。

性別や年齢、障害の有無、どの親から生まれるかは、変更困難または不可能な特徴です。また、警備員や警察にマークされる「若い男性」は不利益を受けていると言えますし、「非障害者の受験生」の試験時間が相対的に短くなる(解答機会が制約される)とも言えるでしょう。高い保険料を課されることや、講習を義務付けられることも不利益でしかないでしょう。

しかしこれらは、差別の不当性に関するどの説から見ても、不当な差別とは言えません*3。第一に、差別する側の悪意や偏見、歪んだ認識等に不当性の根拠を求める立場――心理状態説――から見て、警備員や警察、入試担当者等は、不利益を受ける人々(若い男性や非障害者の受験生等)に対する誤った認識を持っているわけでも、その行為や方針は敵意や偏見に基づいているわけでもありません。

第二に、差別される側が被る不利益(害)や機会制約に不当性があると考える立場から見ても、若い男性や他の受験生などへの不利益は、暴動の予防や障害のある受験生への解答機会の平等な保障という、妥当で重要な目的によって正当化されるでしょう。

第三に、どれも不利益を受ける人々を貶めるメッセージを伴うことはありません。

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