最愛の息子を看取った、72歳看取り在宅医の葛藤…「なぜ医師という職業を選んでしまったのか」

看取り医として4000人以上の患者を看取った関本雅子さん(72歳)を襲ったのは、実の息子である剛さんが末期がんに侵されているという現実だった。前編『45歳の息子を肺がんで喪った、看取り在宅医が痛哭…我が子を看取って「はじめて気づいたこと」』に引き続き紹介する。

客観視などできない

わずかに抱いていた雅子さんの希望は叶わぬものとなる。今年4月に入って、雅子さんが旧知の信頼できる医師に意見を求めたところ、剛さんの病状もよく知るこの医師は即座にこう断言したのだ。

残念ですが、7月の学会に出るのは無理です

実際に、剛さんが亡くなったのはその宣告の2週間後だった。雅子さんが振り返る。

「冷静に考えれば、どう見ても剛が7月まで生きることは難しかった。でも私は、当然の判断ができなくなっていたんです。

もう少しだけ生きてほしい、息子の最後の願いを叶えてあげたいという気持ちが、病状を客観視する力を消し去ってしまったのです」

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前編で述べたように、肺がん、脳転移ありと診断された剛さんの予後は「生存期間中央値」で2年と診断されていた。

生存期間中央値とは、同じがん、同じステージの患者集団が同じ治療法を受けたとして、そのうち50%の人が亡くなるまでの期間を示す。

その50%が生き残るという「2年」に到達した昨年10月まで、剛さんには抗がん剤の副作用はあったものの、具体的ながんの症状は見られなかった。

だが、実は秋ごろからは手が動かしにくくなる、呂律が回りにくいなどといった脳に転移した腫瘍の影響と考えられる症状が出始めていたという。

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