そして若者は安倍氏を支持した
安倍氏がなぜあれほど歴史問題で動かなければならなかったのか、日本人はよくわかっていないのではと思うことがある。
安倍氏は不思議な人で、あまり理屈っぽくはない。天性の勘みたいなモノをもっている。しかもその勘がいつも正しかった。10年ぐらい先が見える人だった。
安全保障にしても歴史観にしても、人が言わないようなことを、平気で口にする。ボーンと前に向かって言う。それが何も変わらない澱んだ日本の雰囲気に辟易している若い日本人に受けていたのだと思う。安倍政権というのは圧倒的に若い日本人の支持が強かった。あの銃撃事件の後も、現場の大和西大寺の駅前にあれだけの花が添えられた。これは若い人たちの気持ちの表れだと思う。
明らかに今の日本の政界や言論界は、この若い層の感覚からずれている。古い55年体制の支持者や読者にしがみついているのではないか。冷戦は30年前に終わっているのだが、基本的にカビの生えたポジショントークを繰り返している。政治家も、メディアも、多くの人が、現実の安全保障環境とか、日本国民の意識の変化に対応していないと思う。
だから、安倍氏が新しいことを言い始めると、古い左派の人たちがバッシングに入った。それでも安倍氏は「後ろから波が来ている」ことがわかる人だった。周りの人が支持率の低下を心配しても、「また上げ潮が来るから」と笑いとばしていた。
安倍氏の死で、10年間、日本を牽引してきた機関車がぽっと消えた感じだ。列車は惰性で走り続けるだろうが、減速には違いない。
新聞報道によると未来を担う若者が自民党から離れ始めている。安倍氏以前から、このような傾向があったが、安倍政権によって逆に自民党への若者の支持が増えた。これを太い流れにしていくはずだったが、安倍氏が凶弾に斃れ、途中で途切れてしまった。国の柱が折れた。
何か不吉な感じがする。