2022.07.28

「貧しく無学な女性と海軍士官の恋」がありえないワケ…「時代考証」の観点でみるドラマや映画

多くの戦争体験者へのインタビューを重ねてきた筆者は時おり、ドラマやドキュメンタリーなど、テレビ番組や映画の時代考証にも携わることがある。軍人が登場する場合、その人物の背景や人事制度を踏まえなければ衣装も決められないからだ。何気ないシーンの裏に裏に隠された面倒極まりない海軍の制度、そして当時の結婚事情とは――。

海軍士官の結婚式写真の例1(志賀淑雄大尉。昭和15年)
 

話題の朝ドラ「ちむどんどん」だが…

いま、NHKの朝ドラ「ちむどんどん」が話題になっている。沖縄の本土復帰の年、料理人をめざして上京するヒロインの成長物語だが、よいほうの話題ばかりではない。Twitterの「#ちむどんどん反省会」のハッシュタグが盛況を見せているように、ツッコミどころも満載なのだ。筆者はヒロイン黒島結菜のファンなので欠かさず見ているが、楽しみたいと思って見ていても、どうしても看過できないアラが必ず出てくる。

ヒロインの上京当時、銀座にあんなイタリア料理店はなかったとか、銀座和光とおぼしきショーウインドーのディスプレイが何年経っても変わらないとか、イタリア料理のプロからも、時代と料理が合わないと指摘を受けたりとか……挙げていくとキリがないが、もともと報道カメラマンだった筆者がいちばん冷めたポイントは、新聞社のカメラマンが使っているカメラが、当時の新聞社ではまず使われることのなかったアマチュア向きの一眼レフで、しかも撮影シーンを見るとフィルムが入っていないのがひと目でわかることだ。

フィルムカメラの場合、フィルムを巻き上げると、巻き上げレバーの反対側の巻き戻しクランクがクルッと回る。もしパトローネ(フィルムのケース部分)のなかでフィルムにたるみがあると回らないことがあるが、プロならフィルム装填のさい、フィルムのたるみをとって最初に2枚の空シャッターを切るときにフィルムがきちんと巻けているかを絶対に確認する。

ところが、「ちむどんどん」では、撮影のシーンでフィルムを巻き上げるとき巻き戻しクランクが全く動かない。つまりフィルムが入っていないということで、これでは写真が写らない。

裏ブタを開けてみたらフィルムが入ってなくて、

「これがほんとの空(カラー)フィルム!」

……という昭和のダジャレでもかましてくれるのかと思ったが、どうやらそうでもなさそうである。私は自分の専門分野だからカメラが気になったが、ほかの職業の人もそれぞれの分野で気になることは山ほどあるだろう。

それで何が言いたいかというと、ドラマや映画というフィクションの世界で、「物語」という大きなウソをほんとうらしく見せ、見る人をその世界に引き込むためには、小さなウソをついてはいけないということだ。すぐれたドラマや映画は、ほぼ例外なく細部の作り込みに妥協がない。何がほんとうで何が間違いか、制作側が知っていてあえて崩すのならいい。だが知らずに間違いを犯すのは恥ずかしい。

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