たくさんいた!? ヨーロッパの森を直立二足で歩く類人猿たち

現生につながるのは、「ヒトだけ」の謎

肉食獣に食べられる人類

もう何年も前の話だが、お酒の席で、ある大学の先生に聞かれたことがある。人類の祖先は、どうやって肉食獣から身を守っていたのか、と言うのだ。

人類の祖先は、最初のころは森林に住んでいた可能性が高いが、後の時代になると草原に進出した。そこには肉食獣がたくさんいる。人類の祖先が木の棒や石器を振り回したところで、大型の肉食獣には敵わないだろうし、群れを作ったり火を使ったりしても、完全には身を守れないに違いない。それなのに、どうして草原に進出することができたのだろうか。じつに不思議だ、と言うのである。

【写真】肉食獣のいる草原肉食獣のいる草原になんで進出した? photo by gettyimages

でも、考えてみれば、完全に身を守る必要はないだろう。もし、肉食獣に食べられることがまったくなければ、人類はどんどん増えてしまうはずだ。

有名な話だが、100年ほど前にアメリカのイエローストーン国立公園で、オオカミを駆除したためにシカが異常に増えて、その結果、森林が荒廃して、生態系が崩れたことがある。初期の人類だって、ある程度は食べられるほうが、生態系としては健全なのだ。それに、いろいろな動物がみんな完璧に身を守れたら、肉食獣は食べるものがなくなってしまう。それはそれで、困ったことだ。

つまり、程度の問題なのだ。まったくの無防備で草原に暮らしていれば、たしかに肉食獣に食べられて絶滅してしまうかもしれない。でも、もしも完璧に身を守れたら、今度は肉食獣のほうが食べるものがなくなって、絶滅してしまう。ある程度は身を守れるけれど、ある程度は肉食獣に食べられてしまう。それでよいのである。

直立二足歩行も程度の問題

さて、直立二足歩行である。直立二足歩行は人類最大の特徴だ。しかし、直立二足歩行だって、程度の問題かもしれない。たしかに、現在直立二足歩行をする生物は、私たち人類だけである。でも、昔からそうだったとは限らないし、中間的な生物だっていたかもしれない。

現生のチンパンジーは、直立二足歩行をしない。二足歩行をすることはあるけれども、直立はしないし、いつも二足歩行をしているわけでもない。たいていは四足歩行をしていて、たまに二足歩行をするだけだ。

【写真】チンパンジーの歩行現生のチンパンジーは、たいていは四足歩行だ photo by gettyimages

いっぽう、私たちは、つねに直立二足歩行をしている。道を歩いていても、四つ足で歩いている人なんて一人もいない。不思議なくらい、みんな二足歩行をしている。「今日は足を捻挫したので、しかたなく会社まで四つ足で来ましたよ」なんて話は、聞いたことがない。足を怪我したときでさえ、私たちは四つ足で歩かないのである。

このように、現在では、直立二足歩行と四足歩行の区別は、はっきりしている。でも、それは現在だけ、しかも地面の上だけの話かもしれない。木の上では、話が違うかもしれないのだ。

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