新しい資本主義
政府は、6月7日、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)を閣議決定した。岸田文雄首相が掲げる「人への投資」に重点を置き、3年間で4000億円を投じる。また、デジタルなど成長分野への労働移動を促すという。
「新しい資本主義」は岸田文雄政権の成長戦略の看板になる。しかし、大学教育が上で見たような状況では、人材面で世界水準になることは望めない。
日本では、とりわけデジタル人材が不足しているといわれるが、そもそも十分な教育を大学がしていなければ、人材が育つはずがない。大学ファンドの構想もあるが、金だけ出したところで、研究や教育が進むわけではない。
また、巨額の補助金を出して、台湾の半導体メーカーTSMCの工場を熊本に誘致するが、ここで生産するのは、10年くらい前の技術を用いた半導体だ。こうした補助金をいくら出しても、最先端半導体には追い付かない。
このように、いま考えられている方策では、展望は開けない。
日本の産業を発展させるためには、基礎となる研究開発と専門的人材の育成を行なう必要がある。日本が世界水準に追い付くには、大学での研究教育を根本から組み直すことが不可欠なのだ。
大学教育の状況は、未来を映し出す鏡だ。上で述べたような状況を根本的に改革しない限り、日本に未来は開けない。