20代半ばから30代のころ、契約スタッフとして雑誌「FRaU」のファッション班に在籍していた笹本絵里さん。結婚、出産ののち、夫の地方への転勤を機に離職した。子育てメインの生活の中で着物と出会い、10年経た今もなお、その愛は増すばかり。2017年に東京に戻り、フリーライターとして仕事を再開してからは、ライター業にこだわらず、着物に関する分野で活動をしている。

今年は息子の卒業式と入学式があり、彼の名にちなんだ馬をテーマに図案を描いて帯をオーダーした。撮影/菅原有希子

浴衣の知識を身につけるための短期集中連載。第1回のテーマは「柄」、第2回のテーマは「透ける生地」でした。第3回は「涼を生むための着こなし」をお届けします。

第1回目「柄から涼を生む」の記事はこちら
第2回は「透けて見せて涼を生む」の記事はこちら

実際に涼しさを感じる、風の通り道

筆者は着付け講師でも研究家でもありません。長いキャリアを積み重ねた書き手の方が多い着物の世界では、足元にも及ばないひよっこライター。着物愛好家+αの身と自覚して、日々学びながらこの道を歩んでいます。同時に、20〜30代のころファッション撮影や取材の現場を経験し、自らもおしゃれ投資をしたからこそ感じる、着物の楽しさ、面白さを等身大で伝えたいと思います。
1回目は「柄」、そして2回目は「透けて見せる」ことで涼感が生まれることをお伝えしました。どちらも、すれ違う人にさえも涼のお裾分けができる、視覚に訴えることに重きをおいた涼づくりでした。今回は浴衣を着る私たちが実感できる涼について。

浴衣を通して「涼を生む」5つのキーワードをお伝えする短期集中連載。第3回目は、「風の通り道から涼を生む」です。

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浴衣や着物には風の通り道がある

風の通り道、脇下の振り部分です。


着物や浴衣は色や柄、素材や技法はたくさんありますが、デザインはすべてが同じデザイン、ひと型です。夏でも袖があってフルレングス。さらに帯も締めれば下着も(時には長襦袢も)着ます。夏に着るとなれば、暑くないと言ったら嘘になるかもしれません。でも……。何を着ていても、夏は暑いですよね。

袖口は、体に風を通す入口。
そして身八つ口を通って素肌へと届きます。

それに袖があると言っても、袖口や、袂の脇(振り)が開いています。さらに女性の浴衣や着物には、身頃の脇も開いています(※身八つ口と言います)。そう、和服には袖口から振りを抜け、身八つ口から身体に届く、風の通り道があるのです。ひとたび風が袖口から入れば、涼風は浴衣に包まれた身に届きます。