ジョナサン店長によるパワハラ傷害事件。その「理由」とは?

「ジョナサン」パワハラ傷害事件①
ファミレス大手「ジョナサン」のとある店舗で起きた、元店長によるパワハラ事件。厨房から響き渡る罵声に利用客が通報するほどだったというこの事件で、元店長が告白したパワハラの理由は驚くべきものでした。
労働問題に取り組む「NPO法人POSSE」理事で、この事件の被害者支援を行った坂倉昇平さん(『大人のいじめ』著者)が、事件の背景を解説します。

被害者である部下は肋骨を折られたことも

ファミレス最大手すかいらーくグループの運営する「ジョナサン」で、店長(当時)によって、殴る・蹴るの傷害・暴行や暴言が日々繰り返されていたことが話題を集めている。

被害が発覚したのは東京都港区の店舗である。すぐ近くに東京タワーがそびえ、家族連れも多い店舗内に、厨房から「殺すぞ」「クソ野郎」などの罵声が響き渡っていた。被害者のAさんは勤務中、殴られ肋骨を折られたことまであった。被害は今年4月まで1年半に及び、耐えかねた利用客からの通報も相次いでいたが、ジョナサン上層部はその声を知りながら無視しつづけていた。

 

筆者は、この事件の「担当者」である。今年4月にこの被害を告発したAさんの相談を受けて、労働問題に取り組む「NPO法人POSSE」理事、個人で加入できる労働組合「総合サポートユニオン」執行委員として、被害のヒアリングや会社との交渉、記者会見に至るサポートを行ってきた。

いったいなぜ、日本を代表するファミレス業界最大手の会社で、これほどのパワハラが横行し、そして放置されていたのだろうか。筆者はこれまでも大企業から中小企業まで、多くのパワハラ相談を担当してきた。その経験を踏まえて、昨年『大人のいじめ』(講談社現代新書)を執筆し、近年のハラスメントの原因や背景を分析した。今回のジョナサンの事件もまた、一見「特殊」に見えるものの、同書で述べた最近のハラスメントの特徴に当てはまる典型例と考えている。

凄惨な暴力を伴うパワハラの共通点とは何か。なぜ大企業ですら、それほどの事態を止められないのか。こうした疑問について、ジョナサンの事件を通して考えてみたい。第一回である今回は、加害者である元店長の人物像に迫ってみよう。

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元店長が、事件発覚後に告白したパワハラの「理由」

元店長は、なぜパワハラを繰り返していたのだろうか。総合サポートユニオンは、労働組合の権利である団体交渉を通じて、すかいらーくにパワハラの真相を究明するため、元店長への詳細なヒアリングを要求した。その結果、暴力・暴言を繰り返していた当時の店長が、自らの行為について、どのような「意識」を持っていたのかを確認することができた。

その内容は驚くべきものだった。元店長は殴る・蹴るの暴行や暴言について、

「Aさんをマネージャー(店長)にしたいという思いが強すぎた」

という回答をしたというのだ。

しかも、Aさんを殴ったときも含めて、パワハラに該当するという認識は当時なかったという。

筆者はさらに、すかいらーく側に「(元店長は殴ったことすら)教育的指導だと思っていたということなのか」と尋ねたところ、その通りだという回答を得た。

たしかにAさんはジョナサンに数年間勤務して経験を積んでおり、目指していた店長へのチャンスが近づいていた。店長になれば、労働時間は長く、責任はさらに重くなる。だからその前に、ミスをしたときには徹底的に追い込んで鍛えておく必要があると考えたということか。元店長の暴力は、部下にこの会社で生き抜いていく作法を教えるための「善意」だった可能性があるわけだ。

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