2022.08.13
# ライフ

山手線内で心臓が止まって…50代女性が直面した「脳へのダメージ」の過酷な現実

「高次脳機能障害」と診断された

日本で「突然死」で亡くなる方は年間およそ10万人、7分に1人が命を落としています。その原因として最も多いのが、心筋梗塞や狭心症、不整脈などの「心疾患」です。

医療ライターの熊本美加さんは、2019年11月に山手線の車内で心肺停止になり、その後さまざまな苦難を乗り越え、日常生活に復帰しました。

熊本さんがライターの仕事に戻るまでを詳細につづった記事は、Twitterで大反響。その「蘇りルポ」をマンガ化し、主治医の東京都済生会中央病院・鈴木健之先生の監修で、万が一に役立つ情報も盛り込んだのが『山手線で心肺停止! アラフィフ医療ライターが伝える予兆から社会復帰までのすべて』です。

山手線の車内で心肺停止になり、JR浜松町駅から急性期病院である東京都済生会中央病院に搬送されてから、どんな治療が行われたのか。【前編】『山手線で心肺停止! 生死をさまよった50代女性が、2週間前に感じていた「予兆」』に引き続き、熊本さんご本人に聞いてみました。

 

急性期病院で行われた治療

――JR浜松町駅で救急車が到着するまで、AEDは作動せず、心臓マッサージは続けられたものの、心肺停止状態のまま病院に搬送されたと聞きました。病院到着後、奇跡的な回復を遂げるまでどんな治療が行われたのでしょうか。

熊本さん:病院に搬送された直後、人工心肺に繋がれ、集中治療室で体温を35度程度に冷却して、動物の冬眠状態のようにする治療が行われました。疲労困憊した脳細胞を回復させるのが目的です。

脳卒中なら血管が詰まったり破裂したり、ピンポイントで脳の機能がダメージを受けます。私のように心肺停止で脳が酸素不足になる「低酸素脳症」では脳全体の機能が落ち、最初に記憶を司る前頭葉が障害を受けやすいそう。

事実、私は倒れる数日前に友人と温泉旅行に行った記憶が未だに消失したままなのです。

病院で治療を受けている熊本さん

――いつ頃、人工心肺を外したのでしょうか。

熊本さん:おおよそ1週間後に人工心肺を外し、奇跡的に覚醒したんです。ただ、直後から脳ダメージによる問題が次々と発生しました。「看護師の態度がなってない」と暴言を吐き、「宝塚にエリザべートを観に行かなくっちゃ」「看護師さんは篠田麻里子だよね」と意味不明な妄想トークが炸裂。ベッドの周りのものを次々と床に投げつけるほど凶暴化して、しまいには2回の脱走失敗でベッドに拘束されてしまいました。

腰には鍵のついたベルトがつけられ、ナースコールを押さなければ、トイレにいくことはおろか、身動きさえとれない屈辱で憔悴しきってしまったんです。

――それは大変でしたね。

熊本さん:夜になれば同室の患者さんたちの「痛いっ」「辞めてよ」「触らないで」といった怒号が響き、昼間は上品なおばさま達も「バカヤロウ」「この野郎」「泥棒」と、次々とアウトレイジ化。私はベッドでブルブルと怯え、心が折れまくりでした。

クリスマスに、病院の窓から東京タワーを見つめつつ、病院のクリスマスディナーをいただきながら、さめざめと泣いたのを思い出します。

病室の窓から見えた東京タワー
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