年間7.9万人が突然死で命を失っている

52歳の時、山手線車内で突然心肺停止し、生死の境をさまよいながらも、社会復帰した医療ライターの熊本美加さん。Twitterでも大きな話題を呼んだ「蘇りルポ」が、マンガ付きの実用書『山手線で心肺停止 アラフィフ医療ライターが伝える予兆から社会復帰までのすべて』にまとめられた。

(c)上野りゅうじん、熊本美加『山手線で心肺停止』より
(c)上野りゅうじん、熊本美加『山手線で心肺停止』より

本書ではこう書かれている。
”突然死の定義は「交通事故などの外因死を除く、一般的に予測されない自然に発生した瞬間死あるいは急死で、発症から24時間以内に死亡した場合」とされています。日本では、年間約7.9万人が突然死で命を失っていて()、その中で最も多いのが心筋梗塞や狭心症、不整脈などの虚血性心疾患によるものです。”

本書に繰り返されているのは、「自分だけは大丈夫」という思い込みへの警告だ。なぜなら熊本さん自身が「自分だけは大丈夫」と思っていたのだから――。なぜそのように思い込んでしまうのか、では「予兆」はあるのか、「隠れ心臓病」とは何か。どんなことに気をつけたらいいのか。本書からご紹介する前編では、「自分だけは大丈夫」と思いがちな現状をお伝えする。

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健診で問題は見つからず、適度な運動も

健康診断はおおむねA。ただし45歳を超えてからは中性脂肪と悪玉コレステロール値の数値が上がり、加齢によって中性脂肪が増えると記事にしてきた現実を実感する日々を送る50代、それが筆者だ。お酒は大好きだけど脂っこいものより野菜中心のバランスいい食事にしているし、運動はあまりしていないけれど、30歳ごろから医師に勧められた「毎朝スクワット」だけはしている。
だから自分は心臓病とは縁がないはず――そう考えている筆者の目に飛び込んできたのは、『山手線で心肺停止』の「はじめに」で熊本さんが書いたこの文章だった。

私だって毎年、住んでいる区の健康診断や、対象年齢のがん検診などは欠かさず受診していました。特に問題はみつからず、「私の血液はビール」「好きな言葉は飲み放題」と豪語していたほどです。体型は中高年に平均的な中肉中背でしたが、悪玉コレステロール値は更年期に入った途端にじわじわと上昇。ただ酒飲みの割に数値は正常範囲だったため「女性ホルモンが減少しているから、しゃーないか……」と特に問題視していませんでした。おうちDVDエクササイズ大好き人間なので、ヨガ、ジリアン・マイケルズのエクササイズ、ジョホレッチ(女性ホルモンを”ストレッチ”し、自律神経やホルモンバランスを整えるエクササイズ)、ピラティスなど、ほぼ毎日やるのが習慣。酒は飲むけどつまみはヘルシーなもので適度な運動をして、帳尻を合わせているつもりでした。”(『山手線で心肺停止』より)

毎日適度な運動もしていた…(写真の人物は本文と関係ありません)Photo by iStock

さらに加えると、熊本さんのご家族に心疾患で亡くなった人はいなかった。筆者の父親は42歳のときに心筋梗塞を起こして入院、60代のときにはさらに動脈が詰まり、生死の境をさまよった体験がある。いまは天国に旅立っているが、その原因は透析や心臓病の薬を飲みながらの脳出血だった。とはいえ遺伝的に筆者も危ないのではとは考えたことはなかった。父の場合は極度のヘビースモーカーに加え、42歳の時にはトラックの運転手をしていて、仕事がハードな部分があったからだ。