高齢化する日本企業、“中高年社員のモチベーション低下”という大問題

60代管理職がほぼいない実態を考える

多くの人は定年後をどのように生きているのか? 話題の新刊『ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う』では、リクルートワークス研究所研究員・アナリストの坂本貴志氏が、豊富なデータと事例から「幸せな定年後の生活」の姿を明らかにしている。

ほんとうの定年後』では、定年後の仕事に関する実態を「15の事実」としてまとめている。そこで、今回は「事実7 高齢化する企業、60代管理職はごく少数」の内容の前半を紹介しよう。

働き続けることが常識に変わる現代において、定年後の就業者はどのように働くことになるか。多くの人は、定年を境として、長年勤めた会社に残り仕事を続けるか、それとも会社を出て新しい仕事を見つけるかを選択することになる。定年後に会社で働く人の処遇の変化を分析してみると、浮き彫りになるのは高齢社員に対する企業側のシビアなスタンスだった——。

60代管理職はほとんど存在しない

高齢期において、会社で働き続ける人の処遇はどうなるか。昨今、管理職になりたくないという人も増えてきているが、実際問題として自分自身にどのような役職を会社が用意してくれるかは、多くの人にとって大きな関心ごとになる。重要な役職を任せてくれるような企業であれば、人はその期待に報いるために熱意をもって仕事をする。一方で、いまの会社で相応の役職が期待できないようであれば、ほかに活躍の場を求めようとするのが自然である。

図表1-14

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」から、10人以上の企業について、部長相当職、課長相当職、係長相当職に就く人の年齢構成を取ったものが図表1-14である。なお、同調査では、役職のデータは雇用期間の定めがないものに限定して集計されている。このため、たとえば非常勤の担当部長といったような人たちは集計に含まれていないことには留意が必要である。

データをみると、大方の予想通り、大半の従業員が定年前後を境にして組織内における枢要な職位から降りることがわかる。

部長職については、30代後半から少しずつ在籍者が増え始め、若い人では40代前半から後半にかけてその職に就く。そして、部長職の構成比率は、50代前半で26.6%、50代後半で26.9%と50代でピークを打った後は急速に減少し、60代前半には8.8%、60代後半には2.7%までその数を減らす。特に、大企業においては、部長職にまで上り詰めることができる人はごく一部である。そのごく一部の人も年齢を重ねるなかでいずれその役職を降りることを余儀なくされる。

課長職ではさらに状況は厳しい。課長職の年齢構成をみると、60代前半でその職に就く人の比率は2.9%、60代後半は0.5%となる。50代後半以降、多くの人は役職定年や定年を経験して役職をはく奪される。60歳を過ぎて、部下を多数有する常勤の役職者で居続けることは、多くの日本企業では不可能になっている。