「あんな葬式にカネを出せるか」…温厚だった喪主が豹変した、理不尽すぎるワケ

「葬儀社員は見た!」第3回
葬儀ディレクターとして数々の葬儀を担当してきた著者が、忘れられない衝撃エピソードを振り返る大好評シリーズ「葬儀社員は見た!」。第2回では、豪邸に住む喪主との間で起こったトラブルについて紹介した。第3回では、あまりにも「ケチすぎる」喪主に関するエピソードを紹介する。

第1回「『このまま火葬していいのか?』葬儀社員が違和感を覚える、意外な死因」
第2回「『すべて一番高いランクのものを』…葬儀社員が遭遇した『トンデモ喪主』」

6畳2間の母子2人暮らし

玄関は、住む人の無気力さが色濃く漂っていた。

 

鏡は姿を映し出せないほど曇り、その手前に置かれた愛らしい人形にはホコリが積もっている。人形の周りにはおびただしい数の衣類や帽子が投げ出されていて、広いとはいえない玄関先には、トイレットペーパーやシャンプーなど日用品が買い物袋に入ったまま放置されていた。

玄関先の散乱は、居間に入ってからも続いていた。

キッチンやトイレの他は、6畳間が2つしかない平屋に、喪主と故人の2人暮らし。奥の間の一角だけが片づけられ、小さな仏壇の前に薄い布団が用意されている。病院から搬送されてきた亡き母のために、50代の一人息子が敷いた布団だった。

photo by gettyimages

葬儀のディレクターとして独り立ちした頃であった私は、その切ない光景に胸を突かれた。この家は、どう見ても裕福ではない。

でも、20代の小娘である私に「どうしたらよいのか分からない。教えてください」と頭を下げる喪主に、思わず情にほだされ、最大限に尽くしたいと感じてしまった。

それが失敗の序章であったとは、露とも知らずにーー。

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