なぜジョナサン幹部は「暴力店長」を「野放し」にしてしまったのか?

「ジョナサン」パワハラ傷害事件②

ファミレス大手「ジョナサン」のとある店舗で起きた、元店長によるパワハラ事件。被害者が骨折するほど暴行されたのにも関わらず、ジョナサン幹部は度重なる通報を放置し続けていました。
労働問題に取り組む「NPO法人POSSE」理事で、この事件の被害者支援を行った坂倉昇平さん(『大人のいじめ』著者)が、幹部の対応の背景を解説します。

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人気テレビ番組の裏側で、ひっそり起きていた「更迭」

今年6月25日夜、TBSの人気番組「ジョブチューン」が話題を集めていた。ファミレス最大手すかいらーくグループの「ジョナサン」のメニューを「超一流の料理人がジャッジ」するという内容である。苦心して開発した料理に厳しい評価が下され、泣き笑いするジョナサンの責任者たちを応援した視聴者は多かっただろう。

しかし、放送の反響の影に隠れるように、その2日後の月曜日に突然、ジョナサンの営業部門トップである営業本部長の「更迭」が発表されていたことはあまり知られていない。更迭の理由は明白だ。東京都港区のジョナサンの店舗で、従業員Aさんが店長から暴言を吐かれ、暴力によって骨折を負わされたパワハラ事件の責任を問われたのである。

これは、形式的に責任を取らされたということではない。店長による「殺すぞテメー」などの暴言が、利用客たちから何度も通報され、その報告を直接受け取っていたにもかかわらず、ほぼ1年にわたって無視しつづけ、「パワハラはない」と結論づけた「張本人」こそが、まさに彼だったのだ。

ジョナサンの幹部ともあろう人物が、なぜパワハラを「黙認」しつづけていたのだろうか?

筆者は、パワハラの被害者であるAさんを支援する労働組合「総合サポートユニオン」の執行委員として、この事件を担当した。今回は、大企業の幹部がパワハラを黙認してしまう理由を掘り下げてみよう。

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ジョナサン幹部の結論は「パワハラはなかった。声を荒げただけ」

まずは、ジョナサン幹部の「怠慢」を振り返ろう。2021年5月から2022年3月までの間に4回、この店舗の利用客から電話やメールで通報がなされていた。厨房から「おめー頭わりーから」「殺すぞテメー」「ゴミ野郎」「くそ野郎」などの罵声が聞こえてきたという内容だ。この通報が放置されているあいだに、Aさんは何度も殴られ、蹴られ、骨折までさせられている。幹部が事実確認のために重い腰を上げたのは、4回目の通報を受けてのことだった。

ところが、営業本部長たちは店長の行為を「パワハラとは判断できない」として、調査を早々に切り上げてしまった。店長が暴言を否定したからだ。事実を隠そうとした加害者を、あっさりと「信用」してしまったわけだ。

 

ジョナサン幹部は同時に、被害を受けているはずの従業員たちにも話を聞いている。だが、「当たり障りのない回答」しか得られなかったという。それもそのはず、従業員への「ヒアリング」は営業時間中に、場所を移すことすらせず、立ち話のようなかたちで行われた。休憩すらまともに取れない忙しさに加えて、加害者が近くで聞いているかもわからない状態で、被害者が事実を打ち明けることの難しさは、考えるまでもないだろう。

こうしてジョナサン幹部たちは、店長が従業員全体に向けて作業を指示する際に「声を荒げた」だけであり、パワハラは存在しないと結論づけてしまった。利用客たちが4度にわたって訴えた赤裸々な暴言の内容は、なかったものとされたのだ。不自然なまでの「手抜き」調査というほかない。

補足しておくと、今年4月に総合サポートユニオンがすかいらーく本社に対して団体交渉を申し入れて以降に、改めて調査が実施され、暴行や暴言については概ね被害事実が認定されている。

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