『燃ゆる女の肖像』(2020)、『17歳の瞳に映る世界』(2020)、『Happening(英題)』(2021)――近年、女性監督による「中絶」を描いた作品が国際的な映画賞を受賞し脚光を浴びている。この背景には、ここ数年、アメリカで広がっている中絶制限法がフェミニズムへのバックラッシュとして世界的に注目を集めていることもあるだろう。そして今年の6月には、米連邦最高裁が人工妊娠中絶を憲法上の権利と認める「ロー対ウェイド判決」(1973年)を覆した。

まだ「ロー対ウェイド判決」が覆される前の2019年、俳優で脚本家のケリー・オサリヴァンさんが自身の中絶体験をもとに脚本を書いた映画『セイント・フランシス』が8月19日に公開される。

ケリーさんのパートナー、アレックス・トンプソンさんが監督を務め、ケリーさんが主演している。全編にわたり約10分に1回、主人公の生理の血が流れる本作は、SXSWフィルムフェスティバル2019にて観客賞と審査員特別賞を受賞した話題作だ。なぜ、ケリーさんは生理の血、そして中絶を描いたのか。ケリーさんが自身の経験、そしていまアメリカで起こっていることも含めて率直に語ってくれた。

『セイント・フランシス』より
『セイント・フランシス』ストーリー
うだつのあがらない日々に鬱々としながらウェイトレスとして働くブリジット(ケリー・オサリヴァン)、34歳、独身。パーティーで知り合った26歳のジェイス(マックス・リプシッツ)とは一緒の時間を共有するも、恋人ではなくカジュアルな関係のつもりだ。そんななか、黒人とヒスパニック系のレズビアンカップルの6歳の娘フランシス(ラモーナ・エディス・ウィリアムズ)のベビーシッターとしてひと夏働くことになったブリジット。特別子ども好きではないブリジットはフランシスと格闘する日々のなか、ジェイスとの間に予期せぬ妊娠が発覚してしまう。迷わず中絶を選ぶブリジットが経験したひと夏とは……。
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多くの女性は中絶について語らない

――ケリーさんの中絶体験を映画化したとのことですが、長い間、ご両親に中絶したことを話せなかったとか。

ケリー:はい。この映画で両親は初めて私の中絶体験を知りました。両親がどんなふうに反応するか不安だったので、長い間話せなかったんです。

『セイント・フランシス』より

――ご両親は映画を観てどんな反応を示しましたか?

ケリー:この映画を観た直後に母は私の気分を和らげようと、「ケリー、あなたが一族で初めて中絶した人だったんだね」と冗談っぽく言ってきました。でも私は思わず、「お母さん、なぜ私が一族で初めて中絶をした人かどうか分かるの?」と言い返してしまいました。

多くの女性は中絶について語りません。さまざまなリサーチによると、実際には私たちが想像している以上にたくさんの女性が中絶をしている。そんなことや、私の中絶経験について両親に話したんですね。すると母は、「あの映画を作ることはあなたにとってすごく勇気のいることだったのね。あなたが優しい人だということは知っていたけど、この映画を見てあなたのことをますます誇りに思う」と言ってくれました。