2012年に日本で初演され、再演が決まるたびにチケットは即完売と言われるミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ ~足ながおじさんより~』。初演から10年目というだけではなく、上白石萌音さんが初めて出演することでも注目を集めている。この演目を初演から毎回必ず見てきたというライターの長谷川あやさんは、ミュージカルを愛し、コロナ前は毎年NYに、時にロンドンや韓国にも「研修」と称してミュージカルを見る旅を欠かせなかった。ミュージカルを愛し、この作品も愛するライターが見た、『ダディ・ロング・レッグズ』での上白石萌音さんとは――。

10年ずっと人気のミュージカルに上白石萌音さんが

日本上演10年目の節目を迎えた、ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ ~足ながおじさんより~』で、新たなジルーシャ役が鮮烈のデビューを飾った。

井上芳雄×上白石萌音『ダディ・ロング・レッグズ』より「幸せの秘密」出典/YouTube FRaUChannel 
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同作は、2012年9月の初演以来、井上芳雄さんと坂本真綾さんの2人によって演じられてきた。今回は坂本さんが出産のため出演できず、新たにジルーシャを演じることになったのが、上白石萌音さんだった。上白石さんは同作の大ファン。初演から同作を観ていて、DVDも持っていると、初日のカーテンコールで自ら語っている

ストーリーのベースは、アメリカの女流作家、ジーン・ウェブスターが1912年に発表した小説『足ながおじさん』だ。よく知られた物語だが、簡単にご説明しよう。孤児院に暮らす18歳の少女ジルーシャは、匿名の慈善家のジャーヴィス・ペンドルトンから資金援助を受け、大学に進学する。ジャーヴィスは、支援の条件として月に一度自分に宛てた手紙を書くように要求するが、素性は決して明かそうとはしない。ヘッドライトに照らされる影でしか知らない相手に、ジルーシャはアシナガグモを意味する“ダディ・ロング・レッグズ”と名前を付ける。ジャーヴィスはウィットとユーモアに富んだ手紙を書く彼女に次第に惹かれていき、やがて、影の正体であることを隠してジルーシャの前に姿を表わす──。

写真提供/東宝演劇部

『足ながおじさん』のミュージカルというと、フレッド・アステアが踊りまくる1955年の映画が印象的だが、本作は、『レ・ミゼラブル』の演出などで知られるジョン・ケアード氏の脚本・演出、ポール・ゴード氏の音楽・作詞により、2009年にアメリカ・カリフォルニア州で初演された、まったく別の作品だ。じつは原作はイギリスではあまり知られておらず、ケアード氏は、妻の今井麻緒子さんの勧めで原作を読み、ミュージカル化を決めた。

英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー名誉アソシエイト・ディレクターであるジョン・ケアード氏は、ミュージカルの金字塔『レ・ミゼラブル』世界初演の潤色・演出など、多くのヒット作を手がけている。1987年の『レ・ミゼラブル』日本初演もケアード氏が演出を担当している Photo by Getty Images

カリフォルニアでの初演後、オフ・ブロードウェイやソウル、ロンドンでも上演。今井さんが翻訳・訳詞を担当した日本版も、2012年の初演以来、変更を加えながら繰り返し上演されている。