2022.08.23

ロシアがウクライナの原発は占拠し、世界を震撼させている真っ最中に日本の「原子力ムラ」が躍起になっていること

原発の存在は安全保障上の大きなリスク

経済産業大臣の諮問機関「総合資源エネルギー調査会」は8月9日、下部組織の会合を開き、次世代の原子力発電の技術開発や商用化を謳う「カーボンニュートラルやエネルギー安全保障の実現に向けた革新炉開発の技術ロードマップ」(以下、工程表)をまとめた。そのトップ・バッターに「革新的軽水炉」を据え、「2030年代半ばから2040年代」にかけて1号機の商用運転を開始するとしているのである。

歴代政権は、福島第一原発の事故以降、原発新設やリプレース(建て替え)を認めて来なかった。これに、工程表は、見直しを迫ったとも受け取れる内容なのだ。ロシアによるウクライナ侵略は、次世代原子力発電が経済安全保障の向上に寄与することを裏付けたと主張し、岸田総理が掲げる「GX(グリーントランスフォーメーション)実行計画」の柱の一つとして、研究開発や新施設建設のための重点的な財政資金の投入も求めている。

だが、工程表は、ロシア軍がウクライナに侵攻後、早い段階から欧州最大級のザポリージャ原発を占拠して「核の盾」化を進め、国際社会を震撼させている事実、つまり、原発の存在が安全保障上の大きなリスクと捉えられるようになった状況については、まったく触れていない。こうした工程表の主張は著しくバランス感覚を欠き、往時の原子力ムラの唯我独尊の議論を彷彿させるものだ。

ロシアのプーチン大統領 photo by gettyimages
 

エネルギーのロシア依存を脱却しつつ、電力の安定供給を維持。そのうえでカーボンニュートラルを2050 年までに実現するには、徹底的な再生可能エネルギーの開発やエネルギー効率の改善を含めた、あらゆる選択肢の追求が欠かせない。とはいえ、原子力ムラの我田引水の主張まで取り入れたのでは、日本の将来が危うくなりかねない。今週は、工程表の問題点と原発のあるべき姿を考えてみたい。

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